現代自動車の賃金交渉、10年ぶりのストなし妥結

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2007年10月

韓国の最大手自動車メーカーである現代自動車の賃金交渉がこのほど妥結した。12回に及ぶ交渉の末、10年ぶりにストなしで解決した。

妥結内容は、ベース・アップ5.8%(8万4000ウォン)、前年度純利益の配分として月給の300%分支給、基本給の750%のボーナス、定年年齢を58歳から59歳へ延長、組合員一人あたり自社株30株の無償割当てなどとなっている。

労組側の要求はベース・アップ8.9%(12万8805ウォン)をはじめ、純利益の30%の成果配分、定年60歳への延長などだが、ストに訴えることなく、ベース・アップについては昨年(5.1%)を上回る成果を勝ち取る形となった。

ストなし妥結の背景

会社側が結果的に大幅ともとれる譲歩をした背景には、昨年の交渉決裂による労組の34日間に及んだストにより蒙った巨額の売上損失(約1兆6400億ウォン)の「悪夢」を今年は避けたい意向があったものとみられる。同社のストによる損失は2003年から2006年までの4カ年だけで総額約3兆8000億ウォンに上る。他方、2006年に発覚した子会社買収に絡む不正資金疑惑により失墜した企業ブランドと信頼を一刻も早く回復させたいとする強い意向も併せて働いたともみられている。

これに対し、同社労組にもこれまで20年近く繰り返されてきた、交渉決裂→ストライキ→妥結といった流れが示すような闘争主義を見直す事情も生じているようだ。「過激派」として知られる金属労組(産別団体、組合員14万3000人)の中の最大勢力である現代自動車労組(同4万4800人)ではあるが、最近は「闘争」よりも「安定」を求める組合員が増えつつある。今回の交渉においては、交渉の決裂から労組側はスト権投票を行いストに入る態勢をとったが、同投票は可決したものの、賛成が2000年以来の最低の可決率(63%)となった。また、同労組のインターネット掲示板では、組合員から経営側の譲歩を評価する書き込みがされるなど組合内部の温度差が露呈した状況となった。そのため、執行部はスト行使に猶予期間を置き、経営側と最後までぎりぎりの交渉を続けることとした。こうした労組側の姿勢の変化には、ストに対する世論や地域住民の批判が大きなプレッシャーとなっていると分析する向きもある。

来年からの産別交渉が試金石

自動車完成車メーカーの労組は2006年に産別組織に移行しており、今年の交渉においても上部団体である金属労組の方針に沿い共に8.9%のベース・アップを要求した。一方、6月に金属労組が呼びかけた米韓自由貿易協定(FTA)反対ストにおいては、現代自動車労組の組合員の中に政治闘争に反対する者が少なくなかったことから、不参加者が出るなど足並みは揃わなかった。自動車メーカー経営側は二重交渉や二重ストを嫌い、産別交渉を拒否してきたが、2007年からはほとんどの企業が産別交渉のテーブルにつくとみられ、すでにいくつかの企業は同旨の約束文書を交わしている。本格的な産別交渉の開始により今後は上部団体の運動方針を広く受け入れる形で交渉が行われることになるが、それに伴い交渉の長期化を危惧する声も出ている。今回の交渉で現代自動車の労使が協調路線に一歩踏み出したところであるが、これがさらに前進していくかどうかその真価が問われる。

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