2007年の賃金交渉

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2007年1月

2007年3月には、約280万人の労働者を対象とする500以上の全国レベルの労働協約が失効する。次の3年間の協約締結にむけて2007年の早い時期に賃金交渉が行われる。

スウェーデン労働総同盟(LO)は、2006年12月1日、鉄鋼労組など傘下にある主要な15組合が参加する統一賃上げ要求を提出した。この要求に含まれるのは、低賃金層に焦点を当てた賃上げ、男女間格差を是正し年金改革をすすめるための特別積立金の導入である。賃上げ幅として、月額で825スウェーデンクローネの賃金上昇を要求。ただし、上げ幅が3.9%を下回らないことを前提としている。最低協約賃金に関しては、相対的に大きな上げ幅となる910クローネの賃上げを要求している。

LOは賃金交渉に向けて重要となるいくつかの点を次のように指摘する。

  • 民間と公共の両サービス部門における賃金をどのように確保するか。
  • サービス部門とその他の産業部門の賃金格差をどのように縮めるか。
  • 全国レベルの合意内容が低いものとなった場合、賃金格差を是正することを考えると、職場レベルの交渉において賃金ドリフトをどのように制限するか。
  • ブルーカラー労働者とホワイトカラー労働者の間の賃金格差の拡大をどうくい止めるか。

一方、賃金上昇の経済への影響について、国家経済研究所(Konjunkturinstituet)は『賃金レポート』において、次のシナリオを提示する。

  1. 2007年~2009年に毎年3.5%賃金が上昇し、20歳から64歳人口の就業率がアップする。現在、77.7%の就業率が79.6%へと上昇し、現在5.6%の失業率が3.6%に下がると予測する。
  2. 毎年4.7%の賃金上昇の場合、失業率は現在のレベルのまま推移し、就業率は77.7%のままである。実質所得は(1)の場合よりも増加幅が小さくなるだろう。

ただし、このレポートは新政権による政策の変更を十分に加味していない予測である。SNはレポート公表直後にあまりにも楽観的すぎる内容と批判した。それに対して労組はレポートが示す見解を一定程度評価しているようである。

他の意味で今回の賃金交渉において重要な役割を担っているのは中央銀行である。現在、インフレ率を2%未満に保っている政策は、今後、どのように変更されるか発表されていない。しかも、与党スウェーデン連合内の政党間において、インフレの水準に関する見解には違いがある。このことを踏まえれば、今後、インフレ率がどのように推移するのか不安定であり、組合としては低いインフレ率を踏まえた低い賃金レベルでの長期の協約締結には二の足を踏んでいる。

しかも、年金制度改革がこの賃金交渉を複雑なものとしている。上記のようにLOは統一要求の中で、男女間格差を是正し年金改革をすすめるための特別積立金の導入を求めている。労組側は年金制度に関する交渉を終えてから賃金交渉に入りたいとしているが、交渉が難航する過程で、交渉担当者の中には年金に関する交渉は棚上げにした方がいいという見解もでてきている。

参考

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