台湾企業の本土撤退により雇用情勢は改善

カテゴリー:雇用・失業問題

台湾の記事一覧

  • 国別労働トピック:2006年9月

雇用情勢の好転傾向

行政院労工委員会(CLA)の7月の発表によれば、台湾企業が中国本土から台湾に復帰したことで台湾国内の失業率は低下傾向にあり、雇用情勢が好転の兆しにあると強調している。

台湾の6月の失業率は、前月より0.14%高い3.98%であるが、過去6カ月間4%を超えていない。これについて、総統府で開催された中山月例会議の席上、李應元CLA主委(委員長)は、台湾企業が中国本土から復帰していることにより台湾の求人が増加したためだと説明した。

李主委によると、台湾の失業率は、今年は4%を超えない水準で推移することが予測され、陳水扁大統領の2004年の選挙公約は達成されると述べている。

今後、多くの台湾企業が中国へ移転を始めた1995年以来上昇傾向を続けた失業率も低下傾向を維持するであろうと、同主委は述べている。

失業率の悪化傾向は過去6カ月間で変化し始めており、台湾の製造業では、台湾企業の中国本土からの復帰により、むしろ労働者不足が報じられていると李主委は述べており、この傾向は台湾の産業部門にとって新たな課題となっているとも述べた。

労働力不足と少子高齢化

李主委は、労働者不足は、台湾の高齢化のために今後も継続する可能性があるとしている。台湾は1993年に国連の人口高齢化基準に達しており、急速な出生率の低下が、台湾経済全般の長期的成長にとって隠れた懸念材料となる可能性がある。

内政部によれば、2005年の台湾の出生数は20万6000人であり、前年から5.2%減少している。2005年の出生率は0.91%であり、1951年の4.997%、1995年の1.55%とは大きな開きがある。こうした状況から、行政院経済建設委員会では今年初め、台湾の人口増加がゼロになる年の経済見通しを2021年から2016年に前倒しし、予測を改訂することに追い込まれた。

2018年まで台湾は人口のゼロ成長を経験するものと見込まれ、特に産業部門では、労働者の供給が大きな危機に瀕する展開になるであろうと、李主委は警告している。

CLA主委は、政府としては、台湾の労働力が、経済、社会の両方にまたがるものであり、ごくわずかな変換であっても、労働、人材、教育、職業安全、移民、外国人労働者の導入、国内人口管理等、政府の多くの政策に影響を与え、これら全てが究極的には台湾の競争力を決定付けることから、労働力を常時分析、観察していくと述べている。

李主委は、講演の中で、2002年に台湾が国際貿易機関に加盟して以降、国内労働市場は国内産業の構造変化の影響を強く受けており、特に多くの企業が海外に移転し、そのため専門的人材と基本レベル従業員の不足が生じたと指摘した。

台湾労働市場への悪影響のために、ついに政府としては、雇用率を再度引き上げるため、税還付や退職プログラム等の国内労働奨励策の促進を検討する一方、海外在住台湾人の採用まで実施することとなったと、李主委は語った。

一方、行政院主計処(DGBAS)事務局長がまとめた数字によれば、台湾の今年1月から5月の平均失業率は、3.84%であった。台湾の今年の失業率は4%未満を維持する見込みであり、単月の最高失業率は通常8月に見られるが、4.11%になると見込まれると、DGBAS幹部は語っている。失業率は通常、卒業シーズンが近づく5月から毎月上昇し、8月にピークとなり、今年後半には再度低下しはじめると、DGBAS幹部は語っている。

こうした見通しから、8月を過ぎてからの月次失業率は、4.11%を超えないものと見込まれ、年間失業率が4%を上回らないことは可能であると、DGBAS幹部は語っている。

2006年9月 台湾の記事一覧

関連情報