試される労働組合の労働者代表性

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年8月

ホワイトカラー中央労働組合連合(TCO)の組合員が労組の集会に出席する割合が1980年以来、50ポイント減少した。スウェーデン中央統計局(SCB)によると、労働組合総同盟(LO)や専門職労働組合連合(SACO)の状況も似通っている。特に若年者層の組合離れが進んでいる。

1980年には、LO組合員の43%が1つあるいは複数の組合集会に出席していた。ところが、2005年にはこの数値が25%に減少し、TCOも52%から29%に減少、SACOも54%から28%に減少という結果が示されている。また、全組合員の25%がいかなる組合集会にも出席していない。組合選挙に投票する組合員の数も減っている。

他の統計でも同じように労働組合の役割に対して否定的な傾向が見られる。組合員を脱退たり、加入を拒んだりする労働者の数が増えている。理由の1つとして考えられるのは、組合が若年者層の職探しの手助けになっていないことである。EU基準での試算による若年者層の失業率は27.5%とも言われている。ただし、スウェーデン政府の用いる基準とは異なる。

一方で、組合が運営する各種の失業保険基金への加入は継続するという労働者が多い。2003年時点の失業保険基金加入者は380万人であるが、このうち労組に加入していない者が75万人ほどいるとされている。この数値はここ数年で11万人ほど増加している。この傾向はホワイトカラーよりもブルーカラーで一層深刻である。しかし、製造業では依然として職場労組が強い存在感を示している。労働者はほとんど労組の提供するサービスを失業保険と同一視し、惜しみなく保険料を支払っている。

組合は今年9月の総選挙において経営者の利害を代表する党が勝利することを恐れている。というのは経営者側の同盟が失業保険の労働者負担割合を大幅に増加させることを約束、あるいは迫っているからである。しかも、組合員が現在税金から還付されている控除を停止しようとしている。もしこの経営者側の提案が実現されれば、最も忠誠心のある組合員ですらメンバーであることが割高に思えてくるだろう。

中央統計局による調査の責任者である労働生活研究所のAnders Kjellberg教授は、労働組合の集会への参加率が低下しているのは、賃金設定の個別化の結果であると分析する。従来、組合によって担われてきたとても厳格な賃金方針の枠組み自体が瓦解しはじめている。2005年には賃金交渉が全く行われていない。全産業で適用される3年間の賃金協約は2006年3月に期限切れとなってしまった。すでに、ほとんどの組合はそれぞれの地方や地域での労組集会を開始している。実際の賃金は職場で非公式に決定されている。実際に差し迫った賃金交渉の中で、個々人の労働者と監督者・管理者との「賃金対話」に基づく、個別化した賃金設定が行われている。組合員の間では、こうして決定される賃金水準に対する不満足の声が高まりつつある。

参考

  1. 委託調査員レポート

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