新労働相、100日の行動計画を発表
―労働雇用省の政策及び計画を全面的に見直し
2006年7月3日、労働雇用省(DOLE)長官に就任したアルツロD.ブリオン元控訴裁判事は、今後100日の行動計画を発表するとともに、同省の政策及び計画の全てを見直す方針を示した。新長官は、(1)労働法改正の推進、(2)民間及び地方自治体と協力した大規模な労働教育の実施、(3)海外雇用庁(POEA)の違法職業斡旋防止政策の全面的見直し、(4)DOLEは海外における雇用機会創出に専念する(国内は雇用創出大統領顧問が担当)――等の考えを明らかにした。さらに、労使の協調促進に向けて双方と積極的に話し合っていく意向を示し、労働争議の解決についても、争議回避に向けた同省の介入方法を変更する予定であるとした。
アロヨ大統領の不正選挙疑惑の浮上など、国民の政権への不満が表面化したフィリピン。その労働事情についても、決して楽観視できない状況にある。同大統領が「2004年からの6年の任期中に1000万人、年平均で170万人の雇用創出」を公約としながらも、2005年に新たに創出された雇用数は70万人。2003年の57万3000人よりは増加しているが、2004年の97万8000人からは大幅に減少した。失業率(2005年)は11.4%と、前年の11.8%から大きな改善はみられず、若年者の失業率は依然として高い。しかし、ここ数年、IT関連サービス、電子、自動車部品、鉱業、食品、ヘルスケア、インフラ、物流の各分野が急成長を遂げながらも、こうした分野の中核を担う優秀な人材は大幅に不足している。同様に急成長を遂げたコールセンター産業においても、フィリピン人の英会話能力が低下しているため、英語に熟達したフィリピン人労働者の育成が大きな課題となっている。
一方で、国内経済を支える海外フィリピン人労働者(OFW)就業者数については、増加傾向が続いている。2005年のOFW数は98万1677人。2006年は100万人を目標としているが、POEAによれば、上半期で既にその半数を超える56万4920人が海外で就業している。これは、前年同期比で1.69%の増加である。高賃金等、より良い就業環境を求めて海外での就職を希望する人々の増加に伴い、違法の職業斡旋業者によるトラブルも多発。POEAはHPで求職者に対して注意を呼びかけているが、根本的な解決策が求められている。
マルコス政権下の1985年から86年に労働副大臣を務めたブリオン氏は、01年3月から02年7月までは労働雇用次官としてDOLEの労働関連グループを主導。02年8月から03年6月までは外務次官を、03年7月からは控訴裁判事を務め、06年6月に辞意を表明したサント・トマスDOLE長官の後任として、アロヨ大統領の指名を受けた。厳しい状況のなか、ブリオン新長官がこれまでの経験を活かし、自身が示した「今後100日の行動計画」をどう実行に移していくのか注目される。
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