マレーシア航空、マレーシアで史上最大級のリストラ

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年8月

経営再建途上のマレーシア航空(MAS・従業員数2万2000人)が5月22日に発表した早期退職勧奨プラン(MSS)に関し、契約社員・外国人従業員を除く18000人を対象にプランを送付したところ、回答期限である6月7日までに4200人以上の応募があった。7月7日の新聞報道によると、MASでは応募者の約62%に当たる2622人に対するプランの適用を決定した。

早期退職勧奨プランの概要

早期退職勧奨プランはMASの3年にわたる経営再建計画(注1)の一環として実施されたもので、応募した従業員が受け取る退職パッケージは、推定で平均10万リンギである。具体的には、一時金として勤続年数1年ごとに給与の1~3カ月分、従業員一人当たり2000リンギの医療手当を受け、また未使用の年次有給休暇の買い上げが可能である。社員・配偶者・扶養家族を対象に入院した場合の手当は退社日から1年間支給され、加えて2006年12月31日まで有効の航空券も1枚支給されるなど、規模のみならず質という意味でも、マレーシアで史上最大級のリストラ計画である。同社の発表によると、この措置は今回限りの募集で、組合と合意している別の早期退職者勧奨制度よりも有利な条件で提示されているという。

早期退職勧奨プランの効果

MASは、年間3億リンギという人件費削減目標を実現するため、早期退職勧奨プランを適用する人数について、応募者の給与水準が低ければ約5000人、高ければ約3000人を見込んでいた。6月9日、会社はプランへの応募状況を発表すると同時に、応募者の分布状況から、給与水準の高い従業員を約3000人放出することになるであろうと発表していた。適用人数が2622名に確定したことにより、MASは年間で2億5000万リンギの人件費と人員の25%を削減することが可能になった。これに伴う関連経費は約5億リンギに上る見込みである。6月29日の新聞報道によると、MASは早期退職勧奨プラン実施の費用に当てるため、マレーシア航空の筆頭株主(約70%を保有)であるプヌルバンガン・マレーシア(PMB) から(注2) 6億5000リンギ、政府から2億リンギ、合計で8億5000リンギの支援を受ける予定であるとされる。

MASのイドリス社長はニュー・ストレイツタイムス紙の取材に答えて、「わが社は現在困難な時を迎えているが、早期退職勧奨プランは従業員との協力の下に実施されたプランであり、会社にとってよい結果が出るものと確信している」と述べた。MASでは同プランを円滑に実施するため、MSSオペレーションズセンターとヘルプデスクを開設し、従業員に必要な支援やキャリアカウンセリングを行う予定である。再就職プログラムについても検討中である。

経営再建計画と人員削減の今後の見通し

マレーシア航空は2005年度、12億6000万リンギの損失を計上しており、2006年第1四半期の決算での純損失は3億2112万リンギとなった。同社は2007年12月までに黒字転換を目指しており、具体的には、2007年までに5000万リンギ、2008年には5億リンギの収益を上げることを目標としている。2006年3月は1カ月で700万リンギの純利益を記録したが、燃料価格の高止まり等懸念材料も多く、同社の経営再建の先行きは不透明である。同社では今後2年以内に早期退職勧奨プランと合わせて約6000人の人員削減を計画しており、海外の拠点や路線の削減、契約満了、出向や退職、自然減等により目標の達成を目指したいとしている。具体的には、2006年7月から12月までの間に早期退職勧奨プランと合わせて3089人を削減し、これとは別に、今後2年以内に3000人を削減する予定である。

参考

  • 5月23日、5月30日、6月26日、6月29日、7月6日、7月7日付ニュー・ストレイツ・タイムス紙、マレーシア航空ホームページ

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