ホワイトカラーの新しい付加給付年金制度

カテゴリー:高齢者雇用

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  • 国別労働トピック:2006年7月

スウェーデンには公的年金(国民基礎年金と付加年金)に上乗せして給付を提供する年金制度が発達している。すなわち労働者と使用者をそれぞれ代表する全国中央組織の間で取り交わす契約による業種別年金(協約年金)である。ここ数年来、ホワイトカラーを対象とする新しい年金制度について労使で話し合いが行われてきた。このほど、4月25日、PTK(ホワイトカラー労働組合のナショナルセンターTCOとSACOの合同交渉機関)とスウェーデン企業連盟(SN)との間での話し合いが合意に至った。

今回の労使交渉が意図しているのは、近年の職業生活の変化への対応である。現行制度では退職時の最終年の給与額を基準として年金額が決定されている。ところが近年、永年同じ職場に勤務するのではなく転職する労働者が増える傾向にある。年金額算定の基礎となる所得の対象年を最終年だけではなくもっと広げる必要性が指摘されてきた。また、臨時労働者は一定以上の労働時間や雇用期間がある者のみ年金制度の適用を受けているが、その基準を緩和する必要性が指摘されてきた。

労働組合を代表するPTKは新しい年金制度の利点について、現行制度における適用対象年齢の28歳以上を25歳に引き下げた点を強調する。SNは経営者の総額の負担が20%ほど削減される点を評価する。旧来の制度では、多くの中小企業者にとって年金制度が経営者団体に加盟することの障害となっていたが、今回の制度改正によって、加盟しやすくなるだろうという見方をしている。

この新しい年金制度の適用を受けるのはホワイトカラーと専門職の労働者約70万人である。当面、1979年生まれの労働者をさかいとして二つの年金制度が並存することになる。完全に新しい制度に移行するのは2040年である。

参考

  • 当機構委託調査員レポート
  • 中野妙子(2004)「諸外国の年金制度の構造スウェーデン」『法律時報』76巻11号、2004年10月

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