ドイツ家電メーカーのBraunが、バルセロナ近郊の工場閉鎖を決定

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年7月

2006年5月19日、ドイツ家電メーカのBraun(注1)が、バルセロナ近郊のエスプルガス工場閉鎖を発表した。同工場は、Braunがスペイン国内に所有する唯一の工場で、スチームアイルトンとハンドミキサーを合わせて年間900万個製造している。経営側の説明によると、工場閉鎖の最大の理由は、コスト削減。労働費用がより安価な東欧または東南アジアに生産を移転する予定だが、移転先はまだ決定していない。そのため、工場の閉鎖時期も今すぐではなく、2008年末を予定している。

同工場の労働者は、およそ700人。35歳以下の若年者は200人ほどで、残りは40代後半から50代が中心である。中等義務教育修了(15歳)後すぐに入社し、30年以上勤務しているという者も多い。研究開発関係に携わるおよそ40人については、ドイツへの転勤の可能性を提示されているが、残りの労働者は工場閉鎖と同時に失業することになる。

今回の発表を受けて、労組は「工場の全面的閉鎖を2年半も前から通告するなど前代未聞」とし、収益性があるとされながらも閉鎖をいきなり決定した経営側に対して強い不信感を示した。また、カタルーニャ州政府及び工業省に対して、工場閉鎖決定を撤回さるためにあらゆる手を尽くすように強く求めた。6月6日にはストを決行。7日朝にはバルセロナ市内で抗議デモを行った。デモ参加者は、在バルセロナ米国総領事館前で、「工場閉鎖を正当化する経済的理由、生産上・組識上の理由はない」「閉鎖の決定は、40年間にわたる労働者の努力を無視し、利益増大だけを考える株主の意向に従ったもの」など、抗議文を読み上げた。

こうしたなか、カタルーニャ州政府及び工業省は、6月6日、フランクフルトへ赴き、Braun側と会談。州政府のバイス労働工業長官は、研究開発活動またはロジスティックセンターなど、経済活動を維持できるような行政支援を提示したとされるが、経営側の答えは一貫して「工場閉鎖は最終決定であり、撤回はありえない」というものであった。

かつては、欧州各国と比較して安価であったスペインの労働費用は現在、その差が縮まりつつある。これに対し東欧、中国、東南アジア地域では、賃金はスペインの4分の1、または8分の1といった水準で、コスト競争ではスペインはかなり苦しい立場にある。特に、家電や自動車など国際競争が非常に激しい部門では、今後も生産拠点の国外流出傾向が続くと予想され、スペインは今後、研究開発や高付加価値産業へのシフトへの実現も含めた対応が求められる。

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