移民労働者の受け入れ手続を簡素化
2004年5月のEU拡大に先駆け、2003年12月にデンマーク国民議会で採択された「新規EU加盟国からの労働者のデンマーク市場参入に関する取り決め」が改正された。この度、国民議会で採択された改正案(通称、イースト・アグリーメント(注1)は、2004年5月にEUに新規加盟した旧東欧諸国(注2)からの労働者の受け入れ事務を簡素化することを目的としたもので、2006年5月1日から効力を発する。
改正イースト・アグリーメント
2004年5月以降、デンマークの企業に雇用される旧東欧諸国の労働者には労働許可書の取得が義務付けられていたが、2006年1月までにこの制度に基づき労働許可書を取得した労働者はおよそ8000人を数える。旧東欧諸国からの労働者の受け入れについて、デンマーク政府は、国内の労働市場の状況を鑑み、EUが掲げる規制撤廃期限である2011年に至るまで徐々に規制を緩和する(暫定的制度)ことを基本的方針(注3)として掲げており、新規EU加盟国の労働者に労働許可の取得を義務付ける等の暫定的制度を導入している。
改正された取り決めの概要は以下の通りである。
- デンマーク使用者協会(DA)のメンバーで、労働組合と労使協約を締結している企業は、旧東欧のEU加盟国からの労働者の雇用について「事前認定書」を取得することができる。これにより労働許可書交付事務の迅速化を実現。
- 2006年12月をめどに、デンマーク使用者協会に加入していない非会員企業が旧東欧諸国の労働者を正当な賃金及び労働条件で雇用しているかを評価する適切な手法を開発・導入し、同非会員企業についても、労使間協約を遵守することを条件に、2007年1月から旧東欧諸国の労働者の雇用に関する「事前認定書」を付与することができる。
- 従前の就労要件であるフルタイム就労に代わり、パートタイム就労(注4)も許可。ただし、週労働時間は30時間以上であること。
- 新規EU諸国からの学生は、労働許可書を取得することなく就労することが許可される。
- 特定の業界で労働力が不足した場合には、旧東欧諸国から熟練工、季節労働者、専門技術者等の労働者を確保するために関係当局と労働市場の諸団体が協力。
- 不法労働者の排除対策を強化。
派遣・駐在労働者の場合
新規EU加盟国の企業は、本国から他のEU諸国に社員を派遣・駐在させることができる。新規EU加盟国の企業がデンマークに社員を駐在させる場合、この駐在員はデンマークの法律を守ることが義務付けられている。その一方でデンマークの労使協約を守ることは義務づけられていなく、イースト・アグリーメントも適用されない。このようなケースに対して反対の声も聞かれる。例えば、ポーランドの企業がデンマークにおいて仕事を請け負い、自社社員をデンマークに派遣・駐在させて事業を行う場合、自国の労働条件(低賃金、長時間労働など)で自社社員を就労させることができる。デンマークの労働組合はこのような「ダンピング労働」に反対し、ボイコットをはじめとした一連の抗議運動が国内各地で展開している。
注
- Ostaftalen。旧東欧諸国からの労働者に関する取り決め。
- エストニア、リトアニア、ラトビア、ポーランド、スロバキア、スロベニア、チェコ、ハンガリー
- ドイツ、イタリア、オーストリアもデンマークと同様、旧東欧諸国の労働者の雇用を規制している。
- デンマークではパートタイムワークは、単にフルタイム(1週間の労働時間:37時間)に達しない就労を意味し、賃金は就労時間数に見合ったものだが、その他の労働条件はフルタイム就労と変わらない。
2006年6月 デンマークの記事一覧
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