「若年者雇用計画」の中止

カテゴリー:若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2006年6月

ルーラ大統領が2002年の大統領選挙で公約に掲げた、「若年者雇用計画」。このほど実施から3年を待たずに計画は中止される運びとなった。

若年者雇用計画の成果

この計画は、世帯収入が最低賃金の2倍以下(約3万2000円以下)の家庭の16~24歳までの学歴が低く、就職経験のない若者を雇う雇用主に対して、政府が年間1500レアル(約8万2000円)の補助を与えることにより、若年者の就業を支援しようとするもの。政府の当初計画では年間26万人に職を与え、労働党政権任期終了時2006年末の33カ月間で71万5000人の新規雇用を作る目標で、2003年7月にスタートした。しかし計画発足以来2年10カ月間の就職者は僅かに3936人にとどまり、政権任期終了を待たずに計画は打ち切られることとなった。

この計画が失敗した理由についてサンパウロ州立カンピーナス総合大学の労働問題研究専門家マルシオ・ポッシマン教授は、「政府が雇用は経済活動の推移に従うという市場原理を無視し、補助により雇用拡大ができると考えた結果」と断じた。「先進国においても難しい補助による雇用創出がブラジルで成功する確率は低い」と指摘している。

政府がここにきて急に計画を放棄したことにより、この計画による就職機会を期待して登録していた20万4262人の若者を失望させる結果となった。当初から就職を希望して登録していた総数のうち就職できたのは約2%に過ぎない。

政府は労働党政権の主要公約の一つであるこの計画を活性化しようと、計画を途中で何回も修正し柔軟性を持たせようとしたが、企業は関心をみせなかった。そのため政府は次第に若者の訓練計画に看板を塗り替え、公式には計画中止を発表しないまま、計画を放棄した格好だ。この代替として政府は、2006年6月に若者市民計画を発令する準備に着手している。これは地方自治体や職業訓練機関、企業と協定を結び、若者の就職に必要な訓練を行なうという計画であるが、この計画においては訓練した若者の30%を就職させるという低い目標に切り替えられている。

出所

  • 海外委託調査員・赤木数成

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