スペイン銀行が、外国人労働者の増加が経済へ与える影響を発表

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  • 国別労働トピック:2006年5月

2005年3月28日、スペイン銀行は外国人労働者の増加が経済へ与える様々な影響について発表した。

2005年12月末現在、スペインに合法的に在住する外国人の数は273万8932人。2004年から38.52%も増加している。この急激な増加には、2005年2~5月にかけて実施された合法化措置の影響が大きいが、外国人労働者の流入スピードが加速しているのは事実である。

外国人労働者の流入はスペイン人1000人につき毎年10人というスピードに達している。これは、19世紀末の米国や1955年~73年のドイツのレベルに近づきつつある。ちなみに、1950~60年代のドイツといえば、多くのスペイン人労働者の移民先でもあった。スペインは、移民の送り出し国から受入国へと変貌しているといえる。

スペイン銀行では、経済成長に対する外国人労働者の貢献――特に家計消費への貢献を指摘。また、外国人労働者がいなければインフレ率はもっと高く、貿易赤字はもっと大きかったであろうとしている。

外国人労働者の賃金は、スペイン人労働者の賃金よりも平均で30%~40%低い。スペイン銀行では、同じ職場ポストで働いていても単に「外国人である」という理由でスペイン人よりも賃金が低いということはないとし、(1)外国人労働者が主に働く部門が低賃金の部門(建設、家事労働、農業労働など)であること、(2)技能訓練度が低いこと――から、外国人労働者の賃金が低いという結果になると説明している。

少子高齢化の進展により、2012年には赤字財政に転ずるであろうと予測されるスペインでは、公的年金制度の将来が非常に心配されている。現在スペインでは、労働力人口100人に対して年金受給者24.5人となっており、年金支給による支出はGDPの8.6%を占めている。EUの推定によれば、2050年には年金受給者数は労働力人口100人に対して67.5人まで増加し、年金額の対GDP比も15.7%まで上昇するとされる。

こうした状況の解決策のひとつとして、近年の外国人労働者の急増に大きな期待が寄せられているのも確かである。度重なる不法移民労働者の合法化政策も、地下経済で悪条件の労働者を強いられる移民の権利擁護という理由に加え、政府にとっては「社会保険料収入を大幅に増やす」という側面があったともいわれる。

しかし、移民労働者の増加は、公的年金制度の財政危機を2012年から2020~25年までに先延ばしにするだけにすぎず、問題の根本的解決には至らないと、スペイン銀行は指摘している。つまり、移民の増加は、比較的若年の労働力人口の増加を意味するだけで、平均余命が伸びる一方で出生率が急激に低下するという現象自体は、何も変化しないのである。一方、外国人労働者やその家族の増加に伴って、教育や医療サービス関連の財政支出が次第に増えることも予想される。

一般に移民女性は、最初はスペイン人女性よりも多く子供を持つが(女性1人当たり1.6人、スペイン人女性では1.32人)、その後はすぐに現在生活している国、つまりスペインの社会や文化への同化とともに、子供の数も少なくなる傾向を見せている。いずれにせよ、スペインにおける外国人労働者の急増はここ数年の現象で、長期的な人口動態及び経済への影響については、まだ不明の点が多いといえる。

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