政府によるISO職業訓練標準とバランススコアカード導入計画

カテゴリー:人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2006年4月

グローバリゼーションと急速な科学技術の進歩により、企業や政府機関を取り巻く環境は劇的に変化しつつある。そうした中、世界市場での競争力を増大させるため、人材の質の向上をめざし、人的資源の開発に継続して投資することが重要になってきた。しかしながら、資材等の調達慣行の確立とは対照的に、一般的に企業や団体または公的訓練機関でさえ、徹底して人的資源への投資、すなわち、職業訓練への投資を精査しようとしない傾向にある。その原因一端には、企業または機関は、株主にも社会全体に対しても訓練への投資についての報告が要求されていないことが指摘される。企業などでは、人的資本や知的資本を保護する経営責任に関する外部への説明責任がまだないのが現状である。

投資の決定についても大部分の幹部が訓練への投資がもたらす収益を評価する方法を知らないこと、またそのような投資を行う意思決定のプロセスを監督するのに必要な管理手段を持ち合わせていないことが課題として指摘される。

そういった中、訓練への投資を企業または公的訓練機関、非営利訓練団体の強化と結びつけ、教育の原則とプロセスに基づいて訓練活動を組織化するために、労工委員会(CLA)の下にある職業訓練局(BEVT)は、最近専門委員会を設立し、1999年にISO事務局が発表した訓練標準ISO10015のコンセプトに基づく訓練促進モデルおよび戦略的業績評価手段であるバランス・スコアカード(BSC)の開発を計画すると発表した。2000年以降米国の大手500社はこのバランススコアカードを採用して、成功を収めている。

専門委員会では、ISO10015の基本データ、米国と欧州の品質報酬制度(Quality Rewards system)、スコアカードの手段を分析し、訓練および訓練スコアカードの予備構想に関して基準となる台湾の企業10社を含む現場調査を行った。訓練スコアカードは合理的な指標に従って技術訓練および職業訓練の業績を測る手段である。

政府は企業への導入のためのフィージビリティ調査を行ったが、技術・職業訓練スコアカードにおける下記の局面における有効性を明らかにすることに重点をおいて行った。

  1. 顧客に関する局面

    この文脈での顧客には、学生および訓練生等の受益者ばかりではなく、親、使用者、専門グループ、経済企画者等の技術・職業訓練への投資の利害関係者も含まれた。

  2. 学習と成長に関する局面

    この局面は、技術および職業訓練施設の個々の改善と自己改善の両方に関して教師あるいは訓練者の訓練および組織文化に対する態度を見直す。

  3. 教育プロセスに関する局面

    企業内部の教育プロセスのあり方についての観点に基づく指標によって、施設の指導者はその中核事業がどの程度うまく運営されているか、その成果とサービスが要求を満たすものであるかどうか知ることができる。

  4. 経済的局面

    この局面は、訓練が地方の発展に貢献しているかどうかに関係する。この局面を選ぶ理由は、技術および職業訓練施設が革新と知識の創出において原動力としての役割を担い、地方の経済の競争と成功に貢献する必要があるためである。

  5. 社会的局面

    この局面は、訓練が個人の社会的移動性を強化するかどうかに関するものである。技術・職業訓練施設は、個人が職場で専門的または職業上の役割に応じるように能力を向上のために準備させるばかりではなく、公共への参加を促進するための能力を確保し、市民の権利と義務を充分に行使できるようにしなければならないからである。

  6. 適応性の局面

    この局面は、施設の訓練方法が訓練生の学習スタイルへの志向を考慮に入れ、それに応じて訓練方法を調整するかどうかに関するものである。技術・職業訓練施設は台湾経済の需要の変化およびその産業構造と構成に応じて必要な資格を調整し、それに適応しなければならないことである。それらはその人的資源、その構造、労働手続およびその教育商品の変化に対して柔軟性がなければならない。

調査の結果、現在の台湾国内における訓練活動は販売志向の傾向が大きく、訓練の質はその大部分が訓練に係わるビジネスマンと彼らの資格、経験ならびに指導の相互作用モデルに依存することが多いことが明らかとなった。また、訓練評価の大部分は、現状では、顧客の満足度に関する調査を行うことに限定されており、顧客サービスの観点は、訓練前後の関連サービスの支援よりも、訓練設備および管理サービスの提供に焦点が置かれている。さらに訓練の結果と組織の実績の間に連関性が必ずしもないことが明らかとなった。

今回の職業訓練標準規格導入のためのフィージビリティ調査の結果から、訓練の質に関するスコアカードは2種類に区分される。ひとつは、公的な職業訓練センターが行う訓練など「外部訓練」のために利用されるものであり、もうひとつは企業内で行われる「内部訓練」のために利用されるものである。さらに、外部訓練と内部訓練の両方を評価採点のために利用される同加重の訓点要素としては計画、設計、実行、見直し、結果の5つをあげることができる。これら5つの要素をコアとして、外部訓練を評価するために25項目、内部訓練評価のためには30項目が開発されている。

今回の調査結果および準備構想に従って、専門委員会では、訓練の質に関するバランススコアカードおよび訓練の質管理に関する中期的な促進戦略を起草することをBEVTに提案した。BEVTは、ISO 10015は訓練のニーズの定義から訓練の設計と企画、訓練提供の監督および訓練結果の評価まで、訓練実施プロセスに関する標準一式を備えるものであると表明している。政府は、新しい訓練促進のメカニズムが、企業と関連機関が連携し、台湾における人的資源管理の実績と発展を強化するものとなることを期待している。

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