欧州グローバル化調整基金の創設

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年4月

欧州委員会は3月1日、年間5億ユーロを上限とする新しい「欧州グローバル化調整基金(EGF)」の創設を発表した。この新しい基金は、世界の貿易構造の変化に直面する地域や産業の年間5万人の EU労働者に対して、賃金補助や新たな職を見つけるための再訓練など、職場復帰のための建設的な支援を行う。

欧州委員会が2005年10月20日に発表した「グローバル化する世界における欧州の価値」と題する報告書は、さらなる市場開放の利益に焦点を当てるとともに、雇用喪失によってグローバル化の負の影響を経験している人々を支援する必要性を指摘した。これに基づき、バローゾ欧州委員長は、イギリスのハンプトン・コートで開催された欧州連合(EU)サミットの前にグローバル化基金の創設を提案した。この基金は、突然の失職に直面する人々に対し、自由貿易の利益を享受する人々の連帯行動を示すものである。欧州の指導者も2005年12月の欧州理事会において、貿易構造の変化による労働者への不利益な影響に注意を向ける必要性に同意した。

国際競争に対する経済の開放は、経済的ダイナミズム、競争および高品質な雇用の創出などの新しい機会をもたらす。グローバル化による変化に対応する欧州連合全体の政策目標は、「成長と雇用のための戦略」(リスボン戦略)が掲げるように、変化の予測と積極的な管理を通じて、技術革新およびグローバル市場の恩恵を加盟国および市民に与えることである。

しかし、市場開放とグローバル化よって競争力の低い分野における雇用の喪失が避けがたい現実となっている。新しい「欧州グローバル化調整基金(EGF)」は、貿易にかかわる構造変化の結果として解雇された労働者を、EUが支援していくことを目的としている。EGFは、国家、地域、地方レベルでの加盟国の努力を補完し、求職支援、個人に合った再訓練、企業家精神の醸成、自営業の支援などを含む、目的に合致したサービスに対して1回限り出資する。支援策は最長18カ月間継続される。

同時に、50歳以上の労働者に対する補助的賃金手当に加えて、訓練参加者のための手当のような、特別の臨時的な「就労手当」を支給する。これは、中小企業を含む、多国籍企業や国内企業に解雇された労働者が新しい仕事を見つけ定着するための支援を目的としている。

EUは、毎年3万5000~5万人の労働者が基金を利用できるよう予算措置する。集団解雇が発表された会社の下請企業やサプライヤーに雇用される労働者も基金の支援策を利用できる。EGFは、すべての加盟国に対して同条件で適用される。各国の数量割当はないが、EGFの支援が1国に集中しすぎないよう公平な運用がなされる。

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