「介護法」草案、閣議で承認

カテゴリー:勤労者生活・意識

スペインの記事一覧

  • 国別労働トピック:2006年2月

2005年12月23日に行われた閣議で、政府は「個人の自立推進および要介護者への介護法(以下「介護法」と略)」の草案に関する報告書を承認、近年の懸案事項の一つであった介護法導入に向けて具体的な議論に入った。

草案では、行政・民間両方が提供する要介護者への各種サービス拠点を結んだ一種のネットワークのような「全国介護システム」の構築を提案。財源面では、国および自治州という行政だけで財源調達するのでなく、利用者も収入に応じ一部を負担することとした。会保障制度の医療サービスは基本的に無料のスペインにとって、利用者の一部費用負担というのは全く新しいシステムとなる。

要介護者(年齢は3歳以上に限定)は、それぞれ要介護度を予め判定する。対象者は、全国でおよそ130万人。サービスは各種あるが、なかでも在宅介護に最も力を入れており、ホームへの入所は、特に重度の要介護者の場合のみとする。「家族と一緒に暮らす」ことを重視するため。現在、要介護者130万人のうち自宅で介護サービスを受けているのは、およそ8万4500人。残りは全て、介護サービスを受けずに、自宅で家族が介護・世話をしており、その担い手のほとんど(83%)が女性とされる。

政府は2006年のうちに介護法を制定、2007年より施行できるとしているが、「全国介護システム」については、2007年から2015年にかけて段階的に導入する予定。まず2007年度には特に重度とされる20万人を対象とする。行政による各種サービス提供(在宅サービス、デーケアセンター、夜間センター等)の充実を図るが、こうした公的サービスの利用が不可能な場合は、民間サービスを利用してもらい経済援助を行う。

カルデラ労働大臣は、同システムの展開のため2007年から2015年にかけて、126億3800万ユーロを拠出し、自治州にも同額の拠出を求める意向を明らかにした。2007年の政府拠出額は4億ユーロ。その後少しずつ増加させ、2015年には22億1200万ユーロとする予定。国家予算の一般会計からの支出となる。一方、利用者による負担については、各人の収入に応じて変動する。平均で35%負担となる見通し。カルデラ労働大臣は、スペイン経済が成長を続けているため、財源調達のための増税は必要ないとしている。

介護法の制定については国会レベルで全政党が基本的に同意。しかし、複雑なネットワークシステムを構築しなければならず、莫大な経費がかかると予想される。政府は、野党だけでなく17自治州の合意をとりつけることも期待しているが、最終合意への到達にはまだ時間がかかりそうである。

関連情報