企業の生産活動のグローバル化と雇用

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年12月

スウェーデン中央統計局の調査(11月9日発表)によると、2002年から2004年の間に、製造業において、年平均で2800人の雇用機会が生産拠点の国外移転に伴って喪失した。これは製造業に従事する被用者全体の0.4%、250人に1人に当たる。主な移転先は中国やポーランド、ハンガリー、エストニア、リトアニアである。

産業別で見ると、特に、電子・光学系のメーカーが生産拠点を閉鎖したことによって、被用者の0.8%に当たる数の解雇が生じた。他の業種では、繊維、衣料、ゴム、プラスティック関連の企業の移転が目立つ。

解雇の発生には地域格差が見られ、スモーランドや島嶼部において特に多い。また、解雇後の再就職に関しても地域の格差が見られる。全国平均では、2002年に解雇された労働者の61%が2004年には正規社員として再就職できたとされる。地域的には、ストックホルムの82%に対して、北部地域では35%であった。

だが、この中央統計局の調査結果を疑問視する声もある。というのは、企業による解雇通知を基準に集計しているからである。すなわち、中小企業による1~5名の小規模のレイオフが除外されているのである。スウェーデン産業連盟(SN)はあまりに解雇の規模を過小評価しすぎているとの見解を示した。SNが2005年、独自に大企業及び中小企業を対象に行った調査結果では、2000年から2005年の間に毎年、2万4000もの職が失われたとされている。

また、企業の海外移転という解雇事由に対する見解の相違も見られる。モード・オーロフソン産業大臣(兼副首相)や政府関連機関は、中央統計局の調査報告は信頼できるものだとしている。産業大臣は、スウェーデンの雇用機会が失われることは懸念材料であり、多大な損失であると述べた。一方、労働組合は適正な賃金が支払われない職をスウェーデン国内に留めておくことには意味がなく、むしろ高等教育が必要なハイテク産業のような職に就けるようにすべきであるとしている。そのためには、積極的な労働市場政策が不可欠であるとする。ただし、新政権発足以来、労働市場政策は大胆な再編がなされ、失業者への手当は縮小されつつある。解雇された労働者は失業手当に依存するのではなく、最低協約賃金の水準を下回る職に就かざるを得ないような状態になりつつある。

近年の歴史を振り返ってみると、スウェーデンにおける企業の海外移転は、賃金水準の低い職が海外に移転し、その後、労働者がより水準の高い職に就く傾向にある。確かに、全ての海外移転が正当なものではなく、疑問視されるべきものもある。例えば、エクストロラックスが2004年にヴェステルビク工場を閉鎖し570人の労働者を解雇した事例では、経営状態が工場閉鎖が必要なほど悪化しておらず技術的な改善によってスウェーデンでの生産を継続することが可能であったという見方が有力である。しかし、一方で、自動車メーカーのスカニアがトラックの運転席の製造ラインをオランダからスウェーデンに戻した例や、アセア・ブラウン・ボベリ(ABB)が家庭用原動機の工場をスイスから戻すなどの事例もある。

参考

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