進む失業保険改革の中味

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年11月

労働組合は失業保険の抜本的な改革を希望し、社会民主党政権も給付額の引き上げなどの根本的な改革を約束していた。しかし、9月の総選挙の結果、政権が交代した。有権者の多くは中産階級を代表するスウェーデン連合に投票し、この中には多くの労組メンバーも含まれていた。新政権発足後に発表された改革は労組が想定するものとは違っていた。改革が具体化する中で、スウェーデン連合を支持した労組も改革に反対し始めている。

新政権が発表した税制改革は、失業保険に対する政府負担額の減額を伴うものであった。その結果、労働者負担額が増える。増加額はそれぞれの基金において失業者の数によって異なる。概算によれば、ブルーカラーを代表するスウェーデン労働総同盟(LO)傘下の金属労働組合では、月額保険料が270から285クローネ引き上げられることになる。地方自治体労組では300クローネ、専門職労働組合連合(SACO)では50から100クローネ引き上げられると推定されている。これらの数値は、失業保険基金連盟(SO、ARBETSLOSHETSKASSORNAS SAMORGANISATION)のピーター・シェネフェルト氏によって確認されている。シェネフェルト氏によれば、LO傘下の全ての労組メンバーは、少なくとも200クローネ以上の保険料引き上げに直面するとしている。

これらの労組間での引き上げ額の違いは、基金に加入する労働者に占める失業者数の割合による。新政権の改革が進めば、失業者になるリスクの最も高い労働者が高額の失業保険料を支払わなければならなくなる。すなわち、学歴が低く収入の低い労働者が最も高い保険料を支払わなければならないということである。

また、失業保険給付水準は現在、従前所得の80パーセントが給付されているが、70パーセントに引き下げられ、失業期間が300日以上の長期失業者は65パーセントとなる。ただし、子どもがいる場合には450日以上での適用となる。その上、社会民主党政権下では、失業保険料の労働者負担分が税務当局への所得報告書の控除対象と考えられていたが、新政権下ではそれも認められなくなる。また、月額の失業保険給付の上限が2万クローネに引き下げられる予定である。従来、2万2000クローネが上限とされており、昨年、社会民主党政権下において3万3000クローネに引き上げる案が検討されていた。失業保険給付日額の上限は、730クローネから680クローネに切り下げられる。

改革案には上記の内容とともに組合費の税控除を除外することも含まれている。これに対し、ブルーカラー、ホワイトカラー、専門職労組などの全ての労働組合が反対している。10月23日にはスベン・オットー・リットリン新雇用大臣とLO、ホワイトカラー中央労働組合連合(TCO)、SACOの3つのナショナルセンター代表との会合が持たれた。TCOの会長は、新政権が発表した改革案を、配慮に欠ける政策、十分に議論されていない案、機能しない政策であると酷評した。この批判に対して、大臣は労組負担金額を引き上げることと給付を引き下げることが、雇用機会を増やす唯一の方策であるとの考えを述べた。SACOのアン・エクストレーム会長は、新政府はこの改革によって専門職労組を叩くつもりであろうと反意を示した。新政府が考えている失業保険改革に関連する方策と、組合費の税控除を止めることは密接に関係している。二つの改革が実施されれば労組メンバーに対する直接的な打撃となり、労働組合組織率に影響する。准看護師やサービスセクターで働く数多くのパートタイム労働者は、家計を省みたときに、改革を受け入れる余裕はないだろう。もし改革が実施されれば労働組合費を支払わなくなるのは自然な行動である。失業はいかなる職に就く者にとっても共通のリスクであり、失業保険給付はセーフティネットとして不可欠なものである。LOのルンドビー・ウェディーン会長は失業保険制度の改革の真の目的は労組の力を弱めることではないかと疑っている。その証拠に、SN(スウェーデン産業連盟)のトップは今回の改革を歓迎している。

参考

  • 研究者側、労働側、使用者側それぞれの当機構委託調査員レポート

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