政権交代と労働組合の役割

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年10月

連立の中道右派が勝利する結果となった選挙後、スウェーデン労働総同盟(LO)ワーニャ・ルンドビー・ウェディーン会長(Ms. Wanja Lundby-Wedin)は批判的な論文を発表した。その中で同会長は「もしも新政権が労働者のための手当を削減したり、LOに好ましくない政策変更を打ち出せば、それに応戦する準備がある。そのようなことになれば、国をあげての対立を生み出すだろう」と主張している(注1)。

これに対して、スウェーデン産業連盟のウルバン・ベックストローム事務局長(Mr. Urban Backstrom)は、「有権者の判断を真摯に受け止められないのだろうか。自らを労働問題の最高の権威だと思い込んでいるのだろうか」と反論した。

地元紙『Dagens Nyheter』においても、LOはもはや労働者のスポークスマンではないという論調が見られる。事実、最近のデータによれば、LOの影響力は低下傾向にある。LOの組織人数はTCOとSACOを合計したものよりも少なくなった。

また、最近の選挙に関する調査によれば、社会民主党に投票したのはLO組合員の54%であり、25%がスウェーデン同盟に投票したとされている。さらに、TCO組合員の51%、SACO組合員の58%がスウェーデン同盟を支持しているというデータもある。

今回の政権交代によって、団体交渉のあり方に関しても変更を迫られるだろう。スウェーデンにおいては、法定最低賃金が制度として存在しない代わりに、団体交渉によって締結される協約が重要な意味をもち、協約で定める額が当該部門に適用される最低賃金と同様の意味合いを持つ。多くの協約が2007年3月をもって失効することになっている。今回の政権交代によって、地方の経営者が国レベルの合意から逸脱することを許容する内容の条項が協約に明記される可能性が出てきた。このことは団体交渉による協約の影響力を弱めることになるであろう。

地方における高い失業率を理由として、地方では国レベルの基準とは異なる賃金水準が設定され、低賃金が支払われる可能性もある。

地方分権型の規制緩和された労働市場や労使関係制度の改定案が提示されている。このほとんどが雇用大臣就任が有力視されている中央党の党首によって枠組みがつくられたものである。彼女は零細企業での雇用創出を減税と規制緩和、賃金引き下げによって実現しようとしている。

出所

  • 委託調査員レポート

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