新しい個人労働者年金口座基金

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年9月

台湾の労働者年金法が今年7月1日に施行された。労工委員会(CLA)から、労働者年金法に基づき労働者年金基金の徴収、支払い、監督管理を任された一機関である労工保険局(Bureau of Labor Insurance)の最近の発表によれば、適用を受ける被用者の約40%が労働基準法(旧制度)に基づく年金制度に留まり、約60%が新設の労働者年金法による年金制度への移行を選択している。新制度は個人口座と年金保険制度の2つに分かれているが、新制度を選択する従業員の内、新年金保険制度を選択する資格があり、かつこの制度を選ぶ従業員以外の従業員のために、労働基準法の適用を受ける企業の60 %が、労工保険局に申請し、個人労働者年金口座基金に拠出することになっている。

新年金保険制度への申請には多くの制限が加えられているため、適用を受ける企業の内、規模に関して新制度への申請資格があるのはわずかに約22%と推定され、個人労働者年金口座基金は個人労働者年金口座から毎年約150憶ニュー台湾ドル(4億6,800万米ドル)を徴収することになる。したがって、新制度の成功と数百万の労働者の退職後の生活には、この新しい基金の管理の効率が要求されることになる。新基金の良好な管理を確保し、よりよい収益率・利益を追求するため、CLAは「個人労働者年金口座基金管理、運用、損益分配規則」を起草した。この規則は、今年7月1日の労働者年金法施行の直前に発表され、行政院の承認を得て実施されている。

「労働者年金個人口座基金管理、運用、損益分配規則」のキーポイントは、次のように要約することができる。

1.基金運用の範囲

基金は国内外の預金、株式、債券、受益証券、投資信託、商品、不動産、デリバティブ金融商品などに投資することができる。この運用範囲には運用可能カテゴリーが列挙されているが、これは考えられるあらゆる投資項目をカバーするためである。さらに、基金の柔軟性と安全性の両方を考慮するため、規則は、外貨預金、証券、デリバティブ金融商品への投資などの項目の投資制限を規定している。

2.年金基金の収益/損失の分配と年金会計

毎年12月31日が収益/損失配分の基準日であり、分配される収益/損失は、基準日から3カ月以内に労働者の個人年金口座に充当される。しかし、退職後の労働者の基本的生活水準の保護を確保するため、労働者が年金の脱退を申請する場合、労働者の個人年金口座に累積された収益は、積立期間の基金運用による損益の実際の配分に基づいて計算されることになる。分配収益が指定された地方銀行の2年物定期預金金利を下回る場合、地方銀行の2年定期預金の平均金利が収益の計算に利用され、分配収益とこの差額を国庫が補填する。

3.個人労働者口座関連情報の開示

労働者の個人年金口座に累積された掛金と収益の金額は労働者の権利である。そのため、上記の個人口座に関連する情報は、個人労働者年金口座として当該当事者に開示されなければならず、文書、音声対応システムまたはインターネットによって照会できるようにしなければならない。

一般に、個人労働者年金口座基金の管理システムは、新制度の運用業績、退職労働者の年金額と経済生活の安定のために機能することが期待される。新たに規定された「個人労働者年金口座基金管理、運用、損益分配規則」を労働基準法に基づく「労働者退職基金の徴収・支払い・監督管理規則」(旧制度)と比較すると、個人労働者年金口座基金の方が、運用範囲の方が柔軟でより多くの権限を有し、制限が少ない。

しかし、新しい制度が成功するか否か、CLAの目標が、安全、利益、福祉の原則に基づく労働者の権利を優先的に考慮し、達成の見込みをもって実施されるか否かは、上記のような仕組みの設計だけで決まるのではなく、判断し行動を起こす運営者によっても左右される要素が強い。

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