10月のILOアジア・太平洋会議、労組の不参加表明で開催延期に

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年9月

第14回ILOアジア・太平洋地域会議は当初の予定では10月10日から13日まで、釜山で開催されることになっていた。しかし開催を2か月後に控えた8月12日、韓国二大労総は会議への不参加と開催地の変更の要求を公式に表明した。政府やILOによる方針撤回の要請にもかかわらず、二大労総は不参加の意思を変えないことを26日の記者会見で改めて表明し、このためILOは27日(日本時間)、アジア・太平洋地域会議を延期する決定を下した。

経緯

ILOは国連機関の中で唯一の三者構成機関であり、毎年開催される地域会議でも各国の政労使の代表者が一堂に会する。今回はアジアにおけるディーセント・ワークをテーマとして、その実現策が話し合われる予定であった。地域会議はアメリカ、アジア・太平洋、欧州及びアフリカの4地域で順次開催されており、アジア・太平洋地域会議はILOのアジア・太平洋総局があるバンコクで開催されるのが恒例だった。タイ以外の初めての開催国として会議を誘致した韓国政府は、昨年の8月から開催準備室を設置するなどして準備を進めていた。

しかし開催まであと60日という段階で、韓国二大労組の韓国労総(FKTU)と民主労総(KCTU)はこの会議への不参加を宣言するとともに、ILOに開催地の変更を要求すると発表した。その理由は、韓国労働部の資料によれば7月半ばから行われたアシアナ航空のパイロットの労働組合によるストライキに際して政府が緊急調停権を発動し、25日間に及ぶストライキを強制的に終了させたことに抗議するためである。

韓国では7月に韓国労総が労使政委員会からの脱退を表明するなど、政・労関係が紛糾している。昨年国会に提出された非正規労働者保護法案をはじめとする政府の労働政策に対し、労働団体は従来から不満を表明してきており、それが今回の会議への不参加決定の背景にあるとも伝えられている。

二大労総は不参加の公式表明とともに公式書簡によりILO事務総長のソマビア氏に不参加の意思を伝え、それに対しソマビア総長は二大労総の幹部あての書簡において「国内の労働問題をILOの会議とリンクさせることは容認できない。」と述べ、決定を撤回するよう求めたという。また、国内の労働問題を理由に自国で開かれる国際会議を欠席することは、国際社会から支持され得ないだろうと述べたという。

政府の見解

一方、韓国労働部は二大労総を訪問して不参加の決定を撤回するよう要請するなど、予定どおりの開催に向けて説得を続ける姿勢を見せていた。韓国労働部の資料によれば、労働部次官のチョン・ビョンソク氏は8月23日の記者会見で、二大労総の決定は「思慮に欠けるふるまい」だとコメントした。三者構成機関であるILOの会議への出席は労働組合にとって権利であると同時に義務であり、また、開催国の労組として会議を成功させる責任がある。会議に欠席することは彼らが果たすべき義務を怠ることを意味し、ILOや韓国政府が痛手を被るのみならず、労働組合自身が国際社会の批判にさらされることになると述べた。

またチョン次官は8月24日、ジュネーブのILO本部を訪問し、政府が労組の説得を続けていることを説明してILOに対しても協力を要請したと伝えられる。

しかし、労組側は決定を撤回せず、8月26日付けKorean Heraldによれば韓国労総の幹部は「政・労関係の誤った処理について、政府が謝罪とともに好意的な提案を示さない限りわれわれは意思を変えない」とコメントした。

延期が決定、今後の予定は未発表

すでにILOは、労働団体に会議への参加を確約させるなどの措置が直ちに講じられなければ、延期は避けられないとの見方を示していた。8月26日の韓国二大労総による記者会見を受け、ILOは会議の延期を決定した。8 月29日現在のILOのホームページは「予想外の事情により、この会議は延期された」ことを告げ、今後の予定の詳細は「できるだけ早く示す」としている。

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