労使関係制度改革

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年8月

スウェーデンでは、労使関係制度改革が2006年9月の総選挙の主要な争点の1つとなりつつある。野党は、労働市場の規制緩和という共通目標の下に同盟を組んでいる。他方、社民党および連立相手の環境党と左翼党は、雇用保障の改善、団体交渉制度の強化で合意している。与野党は、現在進行中の2つの論争に巻き込まれている。政権与党は労働組合側に立ち、野党はスウェーデン企業連盟(SN)側に立っている。

論争の1つは、団体協約の締結を拒否する企業に対する労働組合のストライキ権に関してである。現行法制は労働組合を排除しようとする企業に対し、労働組合が産業別労働協約に署名するよう労働争議に訴えることを認めている。その際、政党も使用者団体も介入することはできない。しかし、最近スウェーデンで操業するEU新規加盟国の企業が、自国の労働協約に基づく安い賃金を自国の労働者に支払っている事例が発生した。スウェーデンの労働組合は、外国企業にスウェーデンの労働協約に署名するよう要求し、労働争議を起こした。労働組合側は、外国人労働者に対する差別と闘う法的権利を主張し、中産階級政党やSNは外国企業の立場を支持している。

もう1つの論争は、国境を越えた同情ストライキに関する問題である。スウェーデンの労働組合には、スウェーデンで操業する外資系企業が自国で起こした労使紛争に対し同情ストライキを実施する権利が認められている。労働組合は、労使紛争の当事国からスウェーデンに生産が移管されることを防止するために、時間外労働の拒否などの同情的行動が必要であると主張する。現行の労働法制および政府は、労働組合の立場を支持し、野党とSNはこうした行動に反対している。

北欧労働法の専門家であるスウェーデン労働生活研究所のNiklas Bruun教授は、「労働組合の行動は、自然で民主的なものである。企業が国境を超えて協調できるなら、労働組合にもそうする権利がある」と主張する。同教授は、「使用者がもし生産を東欧諸国へ移転させるという脅しをかけたなら(この場合はスウェーデンへの移転)、労働組合は全く交渉力を持たない。国際化の恩恵を一方の当事者にすべて与えるようなことをしてはならない」と語る。

労働組合の弁護士も、「労働協約があろうとなかろうと、使用者は労働者に対してあらゆる圧力をかけることができる。使用者は、次から次へと生産国を移転し、労働者を変えることができる。労働組合には、これまでのように同情ストライキに関する無限の可能性を認めるべきである」と主張する。

SNは、スウェーデンの労働組合が労働協約を締結しているのならば、同情ストライキは違法とされるべきであると強調する。SNによればそのような法制は、他の国々では一般的であり、スウェーデンの産業は、不利益な状況に置かれているという。スウェーデンの中産階級政党も、労働組合および現行の労使関係制度に対する攻撃をさらに強化している。中央党の6月の大会では、中産階級政党が政権を取った暁には同情ストライキを廃止すると公約した。労使の見解が一致しない場合に労働協約について解釈する三者構成の労働裁判所も同情ストライキの廃止を約束している。

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