スウェーデン企業連盟(SN)の会長交代とSNの戦略

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年7月

2001年にスウェーデン産業連盟(SI)とスウェーデン経営者連盟(SAF)が合併し、スウェーデン企業連盟(SN)が設立されて以来、新組織の主要な機能は、企業家精神の重要性を政治家と一般大衆に対して普及させることにあった。スウェーデン企業連盟は、使用者団体よりも産業ロビー団体としての特徴を有する。スウェーデン企業連盟は、賃金交渉では何の役割も担っていない。賃金の団体交渉は、産業別使用者団体と全国労働組合との間で行われる。

スウェーデン企業連盟の新会長に、元中央銀行総裁で、現在は生命保険会社スカンディア社のCEOを務めるアーバン・バックストローム氏が今夏就任することが決定した。政治評論家によると、バックストローム氏はより政治的な役割として、2006年の議会選挙において社会民主党を敗北に追い込むための準備を担っていくと見られている。

スウェーデン企業連盟は、賃金の団体交渉を産業別団体に委ね、労使関係分野とのかかわりは薄かった。もし次期議会選挙で穏健党が勝利した場合、スウェーデン企業連盟や使用者全般が中産階級政党と協力し、過去50年間に築き上げられた労使関係法制を廃止するのか、あるいは現在の団体交渉制度を維持し労働組合との協調の道をさぐるのかが注目されている。スウェーデン企業連盟は、「労働市場の均等を回復させる」ため、7項目の労働法制改正案を盛り込んだ次のようなリストを発表した。

  1. 均衡に関する規則が必要である。例えば紛争の範囲と目的は、その結果が企業や第三者に及ぼす影響に関して釣り合いのとれたものでなくてはならない。
  2. 同情ストライキを禁止し、直接関係のない企業は、他社の紛争に巻き込まれないようにしなければならない。
  3. 責任ある協約に署名するよう当事者に強制することができる、法律に基づく調停手続きを導入しなければならない。
  4. 調停者には、ストライキを延期または中止させる広い権限が与えられなければならない。
  5. 社会に危険を与える紛争は禁止されなければならない。
  6. 労働協約のない労働組合は、既に労働協約が締結されている領域において争議行為やその他の行動を起こしてはならない。
  7. 労働組合は、組合員が1人もいない企業に対して争議行為を起こしてはならない。

提案された労働法制の改革は、スウェーデンで操業する外国企業がスウェーデンの労働協約で規定された規則に従うよう強制するため、法律で保護され、三者構成の労働裁判所が判示した現行の労働組合権の変更をめざすものである。今日、スウェーデンの労働組合は、スウェーデン人労働者を雇っていない外国企業が、スウェーデンの産業別労働協約に署名するまで、ストライキを実行し、当該企業がスウェーデンで操業するのを阻止することができる。たとえその企業が本国で労働協約を締結していたとしてもである。スウェーデン企業連盟は、外国企業の本国での労働条件や賃金が適用されるとするEUのサービス指令を支持している。スウェーデン政府は、欧州連合理事会で提案された同指令に関し、理事会が欧州委員会に再検討を促した際の急先鋒となった。

スウェーデン企業連盟は、公式には、スウェーデンの団体交渉モデルを支持しているが、スウェーデン・モデルを新たな労使関係に変更していかなければならないと主張する。責任ある団体賃金協約を締結するための賃金決定制度に労使が完全に責任を持つことが重要であるが、現在は当事者間の力関係に著しい不均衡がある。それゆえ、再び制度に均等をもたらすために、政治が基本的規則を現代化する時期に来ているとしている。

スウェーデン企業連盟によると、現行制度では、労働組合がストライキを起こしたり、時間外労働を拒否することがあまりに容易にできる。使用者側にとっての脅威が本物であるのに対し、争議を起こす組合のコストはごくわずかである。使用者は、紛争を回避するために、長期的観点からは企業の競争力を害するような短期的解決策をさがさなければならない。使用者は、ストライキに対抗する実際的な手段を全く持ち合わせておらず、ストライキの警告だけで、使用者を怯えさせるのに十分である。紛争の解決は、多額の費用と危険を伴うものとなっている。

スウェーデン企業連盟は、産業別労働協約が労使関係を取り扱う責任ある方法であるとしている。製造業の労働組合と使用者は、国際競争にさらされ、雇用維持のためには、賃金決定において責任ある行動が不可欠であることを理解している。しかし、最近、いくつかの職業別組合は、輸出産業が直面している状況を考慮せず、ストライキの警告などによって輸出産業よりも高い賃上げを獲得している。製造業の労働組合は、この賃金の調和を受け入れてきたが、スウェーデン企業連盟は、輸出産業の組合が永遠に穏健な姿勢を示し続けるとは限らないとしている。

スウェーデンが競争しているほとんどの国々においては、同情的行動やストライキが認められていない。これらの諸国においては、ストライキの前に一般投票を行う規則がある。スウェーデン企業連盟は、より中立的な条件を導入し、同情的行動を禁止したいとしている。使用者側がこの規則の変更を強固に主張している背景には、グローバリゼーションがある。グローバル化は、製造業に賃金の譲歩とより柔軟な労働条件を強いる新たな原動力となっている。北欧の労働安全衛制度に対しても、中国の労働者は病欠など要求しないという主張がなされる。もう一つの理由としては、中央ヨーロッパの労働組合が、雇用維持の約束を得るために、交渉で譲歩に応じたことが挙げられる。

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