社会保障基金、ノンフォーマル労働者にも拡大

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年6月

社会保障局(SSO)は、2005年5月6日、現在社会保障基金の対象となっていないインフォーマル部門の労働者も、制度の対象に含めていく考えを明らかにした。

SSOはここ数年、現在公務員と民間企業の従業員のみが対象になっている現行の社会保障制度をインフォーマルセクターの労働者にまで拡大することを検討している。最近では、スコータイ・タマティラート・オープン大学と共同で、制度拡大のためのプロジェクト研究会を行ってきた。このプロジェクトは、「ノンフォーマル労働者保護プロジェクト(Non-Formal Labor ProtectionProject)(注1) と呼ばれており、代表のタナチョン氏はこの調査結果から、現在のタイにはおよそ3269万人がノンフォーマル部門に従事していると推計されたという。

この部門に該当する業種としては、家庭内の労働従事者、日雇い労働者、メイド、下請けの建設労働者、漁業、農業、屋台経営者、自営業者も含まれる。この3000万人のうち、610万人が社会保障制度に参加したいとの意思を表明しており、月120バーツ程度の社会保障費を負担することが可能だとの回答が挙がっているという。

この研究会では、ノンフォーマル労働者のための社会保障制度に、年金、死亡、疾患、事故、児童、障害などの支援を含むことの可能性を検討しているという。タナチョン氏は、現在の社会保障制度ではフォーマル部門の約800万人の労働者しかカバーできておらず、国民の大部分を占める「ノンフォーマル」な労働者を対象としない限りは、完全な社会保障制度とは呼べないとコメントしている。そして、この制度を代替するといわれている現行の30バーツ医療制度は、社会保障制度を補完するものであり、代替するものではないと述べている。

一方で、ノンフォーマル部門の労働者および経営者らは、保障制度そのものは歓迎であるが、保険費用を負担することに消極的であることも明らかになっている。また、日雇いベースの賃金体系の労働者から、どのように保険料を徴収するのかも問題となっている。さらに、すでに確立された保障基金がある公務員の制度に、新たな制度を加え、基金の運営が不安定になることを危惧した公務員からも強い反発も挙がっている。

参考

  • BangkokPost,2005年5月7日号

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