受け入れ外国人労働者をめぐる諸課題

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2005年2月

現在台湾は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、モンゴルの6カ国を対象として外国人労働者の受け入れを行っている。2004年12月のこの欄では、外国人を受け入れるにあたりベトナムとインドネシア人労働者の失踪が多い現状とその原因、製造業分野での外国人労働者受け入れ規制緩和の方向、外国人配偶者への職業サービスの開始について報告した。今回は、労働災害、家事労働者法制定の動き、外国人配偶者が増加傾向ある現状について、以下に報告したい。

外国人労働者の労働災害

最近、労働災害関連団体と外国人労働者は共同で、労働災害を被った外国人労働者が、適切な治療と補償金を受けられる措置を確立するよう行政院労工委員会(CLA)に要求した。その訴えの背景には、外国人労働者が労働災害を被った場合、働くことができないばかりか、医療補償金の支払や刑事・民事訴訟が生じるため、それを回避するために直ちに本国に送還してしまう雇用主の存在がある。

台湾工作傷害受害人協会(TAVOI)によれば、外国人労働者から複数の苦情が同協会に寄せられているという。その中には、多くの外国人労働者が、技能不足にもかかわらず危険な追加業務に従事させられており、傷害をおった場合でも、適切な治療や補償金などの提供もなく、外国人労働者仲介人と結託して本国に送還している雇用主がいるという苦情があった。

現在、TAVOIは、CLAに対し、雇用主と労働災害を被った外国人労働者の間で、1)未解決となっている紛争に関与する、2)補償金の支給前に、傷害を負った外国人労働者を本国に送還させない、3)雇用主が、労働災害に関する訴訟で和解しない場合、外国人労働者雇用許可に留意する、4)地元労働者と同一水準の補償金を支給する、5)外国人労働者を政府の公式統計資料の対象に含める――などの要求をおこなっている。CLA側は、雇用主が通常支払う補償金の問題を除き、基本的にすべての要求を受諾した。さらに、報道によると労働団体とCLAは、実際に外国労働者が、劣悪な職場環境の下で地元労働者が忌避するような厳しい労働に従事させられているケースが少なくないことを背景として、傷害を負った外国人労働者の支援を目的に独立した立場から外国人労働者仲介人の実情を調査する委員会を設置することを決めた。約30万人の外国人労働者が労働災害に見舞われるのは、日常的な出来事であるという。政府と雇用主にとっての緊急課題は、労働災害防止に効果的な対策を講じ、適切な処置を実施することであるといえる。

家事労働法の制定に向けて

外国人労働者が多く従事する家事労働者の保護を目的とする家事労働法の制定に関する一連の審議が現在行われている。家事労働者に特有の労働条件、特に労働時間の特殊性によって、家事労働者は、労働基準法に基づく労働条件の下で働くことが難しい状況にある。そのような状況を招いている原因は、家事労働者が労働基準法の適用対象から除外されていることにある。しかし、外国人家事労働者団体と人権擁護団体の中には、長時間労働や虐待などの劣悪な労働条件を強いられていることを理由に、家事労働者の労働条件の保護を目的とする特別法を直ちに制定し、公布する必要があると訴える人々も出ている。全体として、その特別法の内容は「労働派遣法」に近いものになると思われるが、政府、労働団体、学識経験者、調査機関などが参加し、十分な時間を費やして、その現状理解、評価、をもとにして、計画および意思決定が慎重に行われようとしている。

外国人配偶者の増加

社会福祉問題に関する最近のセミナー報告によれば、台湾政府が1987年に台湾海峡渡航を解禁して以降、香港とマカオを含む、中国本土から渡来した20万人以上の女性が台湾人男性と結婚しており、南アジア諸国から渡来して台湾人男性と結婚している女性も11万人以上に達しているという。すなわち、現在、台湾に住む外国人配偶者の数は31万人以上ということになるが、その数は、台湾で現在就労している外国人労働者や地元住民の数にほぼ匹敵するものである。現在の増加率を鑑みると、台湾における外国人配偶者の数は、2年後にはおよそ40万人に達する見込みである。

一方、公式統計では、外国人と結婚している台湾人は約5万人、その外国人配偶者の中には、2003年に中国本土から渡来した約3万人が含まれている。同年の新生児総数22万7000人の約13.4%は台湾人と外国人配偶者の間に誕生した子供であり、新生児7.5人につき1人が国際結婚で誕生したという数値も示されている。こういった状況から、母国語、文化への適応度、他の台湾人とのコミュニケーション、子供の教育等といった問題が今後懸念されるようになる。

また、台湾人同士の夫婦の間での出生率は現在、夫婦1組につき1.2人にまで低下していることから、政府は、全体計画を策定し、潜在的問題の解決を図ることが急務の課題となっている。

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