高齢者雇用の増加と障害手当受給者の減少

カテゴリー:高齢者雇用

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  • 国別労働トピック:2005年2月

リスボン戦略に掲げられた2010年の目標を達成するため、欧州連合(EU)加盟各国の労働市場政策を再編することの緊急性が声高に叫ばれている。オランダの労働市場は明らかに改善の兆候を見せているが、再編の緊急性に関する認識は薄い。過去10年間高齢者の労働市場への参加が顕著に増加しており、オランダの弱点の一つとされている障害手当受給者数も徐々に減少している。これらの改善は、リスボン戦略目標を達成するために十分なスピードであるとは言えないが、将来に向けての明るい見通しを示すものであると指摘されている。

1.高齢者の労働市場への参加

過去10年間、より多くの高齢者が仕事に就き始めた。労働力率の上昇がもっとも大きかった年齢階層は、55~59歳層であり、1993年の38%から2003年には53%に上昇した。50~54歳層の労働力率も、2003年は70.3%と高水準を記録した。これは、全体平均の65%を上回り、男性平均の75%をやや下回る水準である。60~64歳層の労働力率は30%を下回り、65歳以上の高齢者の労働力率は約5%となっている

高齢者も男性と女性では、労働力率に大きな違いが見られる。高齢の男性は、高齢の女性よりも数多く働いている。50~54歳層の男性の86%が1週間に12時間以上有給の仕事に従事しており、オランダの全体平均を上回っている。わずか10年前には、この比率は79%であった。55~59歳層の男性の労働力率は79%であるが、60~64歳層の男性の労働力率は26.8%となっている。

高齢の女性の労働力率は、全体平均を下回っているが、近年急速に上昇している。1993年から2003年の間に50~54歳層の女性の労働力率は、32%から54%に上昇し、女性の全体平均とほぼ同じ水準となった。同じ期間に、55~59歳層の女性の労働力率は、18%から34%に上昇した。また、60~64歳層の女性の労働力率は、4%から10.5%に上昇したが、依然として低い水準にある。高齢な女性の就労の選好には、世代ごとの明白な特徴がある。若い世代は、出産後も有給の仕事に留まることを受容し、当然と考える傾向がある。

2.障害手当受給者

障害手当受給者数は、2003年初頭以降低下している。2002年第4四半期に障害手当受給者数は最高の99万3000人に達した。しかし、2004年6月末にその数は2.5%減少し、96万8000人となった。この1987年以来の大幅な減少は、障害手当支給に係る法律改正によって生じた。最近の大きな改正の一つは、2002年4月1日のいわゆる「門番法」(Gatekeeper Act)の導入である。この法律は、使用者と労働者に、傷病初年度の末に職場復帰のためにどのような手立てを講じたかを記述した復帰に関する報告書を提出する義務を課した。2004年1月1日以降、使用者は労働災害にあった労働者に従前賃金の70%を2年間(それ以前は1年間)支払わなければならないこととされた。2年経過後、労働者は障害手当を請求することができる。これらの法律は、障害手当受給者数の減少を目的としており、効果を生んでいるように見える。

全体の障害手当受給者数は減少傾向にある一方、女性の障害手当受給者数は1998年の27万2000人から2004年6月には35万6000人に増加した。同じ期間に男性の障害手当受給者数は、44万2000人から41万7000人に減少した。男女間の傾向の違いについてはいくつかの原因が考えられる。まず最初に近年女性の労働力率が急速に上昇するとともに、障害を患う危険性も増大していることが挙げられる。しかしながら女性は男性より障害手当を請求する割合が大きく、その比率は2003年に男性が100人に10人であったのに対して、女性は100人に12人が請求した。さらに男性の減少の要因としては、数多くの男性が65歳に達して年金制度に移行した結果として、障害手当受給者が減少したことが挙げられる。現在、55~64歳層の男性は、障害手当受給者の半分を占めている。このため、男性の障害手当受給者数は、将来も低下し続けると見られている。

参考

  • 欧州雇用観測所(European Employment Observatory)ニュースレター12月号

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