欧州委員会報告書
―リストラで労使関係はより重要に

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年2月

欧州委員会の報告書「2004年の欧州の労使関係」によると、グローバル化による大規模な変化は、欧州における労使関係を、より重要なものとしつつあるという。同報告書は、企業レベルの交渉における労働者の基本的関心は、短期の経済的利益よりも雇用保障に向かっているとしている。

グローバル化は、労働組合と使用者を取り巻く環境を変化させている。仕事と家庭生活の調和、仕事におけるストレスへの対応、パート労働者や臨時雇用などの新たな雇用形態に対する保証の確保などの新たな挑戦が生じている。

2001年のEU平均の労働組合組織率は26%であり、デンマーク、フィンランド、オランダ、ポルトガル、スペイン及びスウェーデンなど、いくつかの国では団体交渉適用率が上昇した。これは、使用者団体の高い組織率及び団体協約の未組織労働者への拡張適用によるものである。その他の諸国のほとんどは、適用率が労働者の3分の2の水準で安定している。

報告書は、労使関係における最近の重要な傾向は、団体交渉の分権化、つまり産業や中央レベルよりも企業レベルで行われる交渉が増えていることを示している。

一般的な傾向にもかかわらず、各国の労使関係制度は、非常に多様であり続けている。すべてに適用できる処方箋はない。共通理解と相互信頼に基づく協力と協調の程度が、交渉を成功させる秘訣である。

分権化が進むと、より協調が必要となってくる。他方、ベルギー、ギリシャ、アイルランド、イタリアなど、いくつかの国では、この協調がより中央集権化している。一つの例としては、政府が関与して賃金交渉の制限を設定する社会的合意が挙げられる。中央集権化された協調は、とりわけユーロ圏諸国で、インフレを管理する方法として、一般的となっている。

協調の進展は、欧州レベルでも見られる。欧州労使による欧州レベルの交渉は、最良の事例を取り入れる価値ある基盤となっている。それらは、EU諸国が直面している技術変化、高齢化などの共通の挑戦に注意を促す助けとなる。

欧州レベルの交渉は、両親休暇、仕事のストレスやテレワークなどの新しい課題に関し労働組合と使用者が合意した協約に加えて、基本的権利に関する法制度を通じて、最低の枠組み条件を設定するのに貢献している。

2000年、2002年に続く第3版となるこのレポートは、欧州における労使関係の異なるレベルの相互作用の増大を指摘し、安定的で信頼のおけるパートナーが、経済環境を再構築するために最も重要であると強調している。

参考

  • 欧州委員会ホームページ

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