ラトヴィア企業の賃金をめぐる政治的紛争

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年12月

欧州連合(EU)欧州委員会のバローゾ委員長とマクリービィ域内市場・サービス担当委員は、欧州議会において「EUは、スウェーデンの労働協約を尊重するが、同時に企業の自由移動も保証しなければならない」と述べた。

欧州委員会は、スウェーデンで操業するラトヴィアの建設企業Lavel社とスウェーデン建設労働者組合(Byggnads)との間で発生した賃金をめぐる労使紛争の扱いについて検討するよう関係当事者から要請されていた。建設労働者組合は2004年11月、スウェーデンの労働協約の署名に応じないラトヴィア企業に対し、ボイコットを断行した。そのため倒産に追い込まれたLavel社は、この労働争議がEU法制に反しているとして提訴し、事件は欧州司法裁判所で審議されることとなった。

10月初めにスウェーデンを訪れたマクリービィ委員は、「欧州委員会は、欧州司法裁判所においてラトヴィア企業の立場を支持する」と述べた。この発言は、欧州委員会がスウェーデンの労働協約制度に疑問を呈していると解釈された。建設労働者やその他の労働組合だけでなく、スウェーデンのオストロス産業・通商大臣も同氏の発言を厳しく非難した。

オストロス大臣は、マクリービィ委員に対し、スウェーデンの労働法制への口出しを慎むよう手紙で要請し、1995年にスウェーデンがEUに加盟する際、スウェーデンの社会モデルには手をつけないことが条件となっていたことを思い起こさせた。マクリービィ委員は、彼の真意が誤解されており、スウェーデンの労働協約に疑問を呈する意図など全くなかったと釈明する丁寧な返書を迅速に発出した。

バローゾ欧州委員会委員長が10月末にスウェーデンを訪れた際にも、メディアの関心がこの問題に集中し、同委員長は騒ぎの沈静化に努めた。

しかし、現実的には、政権与党の社会民主党幹部ですら、ラトヴィア企業の事件に関し、スウェーデン側が欧州司法裁判所で勝訴する可能性はほとんどないことを理解しているとみられる(判決は2007年までかかると予想される)。問題はむしろ、どの程度まで、この事件を政治問題として扱っていくかである。

スウェーデン政府は、EU域内の国境を越えたサービス取引に関する規則を規定するEUサービス指令の策定交渉において、できるだけ積極姿勢を示すよう努めているが、労使関係をどのように扱うかについては、加盟国が権利を維持すべきであると主張する。政府は、「ソーシャル・ダンピング」は容認されるべきではないと強調する。つまり、スウェーデンの労働組合は、同情的な二次的争議行為や柔軟性を欠いた雇用保障、使用者が繰り返して批判するその他の法的要素について、引き続き権利を保障されるべきであるとしている。

野党のキリスト教民主党のポタリング氏は、スウェーデン政府の対応を「EUサービス指令とは全く関係ない問題を持ち出し、指令の採択を妨害するための脅しをかけている」と批判する。

社民党のアンダーソン氏は、「欧州委員会は、EU諸国がお互いに労働条件の悪化に向けて競争するよう仕向け、どの社会モデルがEUを支配すべきかをめぐる紛争に導こうとしている」と警告する。

ラトヴィア企業とスウェーデンの労使関係に関しては、ブルーカラーの労働組合であるスウェーデン労働総同盟(LO)とラトヴィアのカウンターパートであるラトヴィア自由労働組合同盟(LABS)がソーシャル・ダンピングの防止を目指す協定を締結した。協定は、最低賃金を下回るラトヴィア企業の賃金水準が適用されるのを防止することを目的としている。

LOは、「職場のある国で有効な団体協約は、EU法制の枠組みでも尊重されるべきである」と主張している。

出所

  • 当機構委託調査員レポート、欧州労使関係観測所オンライン(EIRO)

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