自動車部門で、再び生産拠点の海外移転の動き

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2005年10月

数年前から企業が生産拠点を海外に移転する動きが目立ち始めたスペイン。産業の国外流出と雇用への影響に対する危機感が高まりをみせるなか、2005年9月には、オペルを傘下に持つジェネラルモーターズが、フィゲルエラス(アラゴン州)工場からポーランド工場に、生産の一部を移す計画があることを明らかにした。

2004年、オペルを傘下に持つジェネラルモーターズは、アラゴン州の州都サラゴサ市近郊のフィゲルエラス工場に対し、600人以上の雇用調整を決定した。8500人の労働者を抱え、州経済の牽引力となっている同工場での大量解雇は、地元住民に大きな衝撃を与えた。さらに2005年9月、ジェネラルモーターズは、同工場の生産の一部を2009年以降、ポーランド工場に移転する可能性があることを明らかにした(注1)。

ポーランド工場の賃金は、フィゲルエラス工場の3分の1。ポーランド工場への生産移転が実現すれば、労働費用は、年間100万ユーロも低く抑えることができるとされる。その一方で、フィゲルエラス工場のおよそ3000人の労働者に加え、近隣の周辺産業の雇用も大きな影響を受けると予想される。最終的には、全部で5000人の雇用破壊に繋がるとみられている。

こうした事態を避けるため、スペインオペルの経営側は、2005年9月13日、労働者側にコスト削減プランを提示し、交渉に入った。同プランの内容は、1)2008年から2015年までの間、賃金その他の賞与全ての上昇率を、消費者物価指数の半分未満に抑える、2)休憩時間の短縮、3)2006年から年間労働日数を15日増やす(賃金は時間外労働扱いとしない)――等である。工場の労組代表はこのプランを、「受け入れられない」としながらも、2007年まで効力をもつ現在の労働協約の尊重を条件に、交渉する姿勢を示している。

スペインの労働費用は、拡大前の旧EU15か国の中では比較的低い。しかし、ポーランドやスロヴェニア、ハンガリー、チェコといった東欧の新規加盟諸国に比べると、3倍もしくはそれ以上になる。この差を補う競争上のメリットをスペインが提供できなければ、今回のオペルの例に限らず、産業の国外流出の動きは、今後も止められないであろう。

フィゲルエラス工場の生産移転については、2005年11月に決定する予定。労使の交渉の行方が注目される。

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