2006年の社会問題雇用省関係予算

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2005年10月

オランダ政府は9月20日、2006年予算案を発表した。社会問題雇用省関係予算には、数多くの改革案が盛り込まれている。現行の障害保険法は、第1院の承認を経て1月1日に、新しい「就労能力に応じた仕事と所得」法に改正される。また、早期退職者のための財政的優遇措置も同日から段階的に廃止される。代わりに休暇期間の資金を貯蓄するための生涯休暇制度(Life Course Plan)が導入される。政府はさらに、失業保険法と解雇を規制する法律を改正する

改革案は、より多くの人々に有給の仕事に就いてもらうことにより、持続可能な連帯に基づく高水準の社会保障、医療、高齢者対策が維持できる社会を目指している。その達成には、社会保障制度と労働市場に関する新たな均衡が必要であり、ケア(社会保障手当)から予防(失業や労働災害を防止すること)への移行が重要であるとしている。

社会経済情勢

オランダは、緩やかではあるが着実に経済不況から脱出しつつある。政府は、輸出の増加、企業収益、設備投資の改善により、2006年の経済成長率が2.5%になると予想している。購買力を増加させるための政府の施策により消費支出も1%増加する。就業者数が9万1000人増加し、失業者数が2005年の50万5000人から2006年には47万5000人に減少すると見込んでいる。

政府は2006年に、減税20億ユーロ、政府支出の増加5億ユーロの合計25億ユーロを投じて購買力を増強するための施策を実施することとしている。このなかには、労働者の失業保険料の5%引き下げ、16歳までの学校教育と16歳から17歳までの職業教育の授業料の廃止、保育のための追加的200万ユーロの支出――などが含まれる。

新しい障害保険制度

第1院の承認を経て、現在の障害保険法に代わる、新しい「就労能力に応じた仕事と所得」法が2006年1月1日に施行される。新しい制度は就労促進に焦点を当て、ほんとうに働けない人々だけに障害手当受給資格を与えるものである。この手当は回復にわずかな見込みしかない人々にも適用されるが、それらの人々は障害者となってから5年間は、毎年医療検査を受ける必要がある。部分的または一時的に障害者となった人々の就労を支援し、部分的な仕事が見つかれば、より多く働くことを奨励する賃金補助を支給する。この制度は、働けば働くほど収入が増加するしくみとなっている。

政府は、使用者が部分的な障害者をより多く雇用するよう奨励しており、雇い入れた使用者にはより低い保険料で病気休暇保険の受給資格が与えられる。

早期退職および生涯休暇制度

生涯休暇制度が2006年1月1日に導入される。この制度は、人々に休暇期間の資金を調達するために貯蓄する機会を提供するものである。労働者は、年収の12%を上限に税の優遇措置を受けて貯蓄することができる。貯蓄が許される最高額は、年収の2倍までである。代償休日および休日もまた貯蓄することができる。貯蓄した資金は、教育目的、育児、両親の看護、リフレッシュなどのための休暇の資金として利用できる。貯蓄は早期退職にも利用可能である。労働者は、この資金を引き出す際、さらに税優遇措置が受けられる。使用者もまた従業員の生涯休暇制度に拠出することができる。貯蓄を両親休暇の資金に利用する両親は、最低賃金の半額を上限とする追加的な税控除が受けられる。政府は同時に、2005年1月1日現在55歳以下の人々に対する早期退職のための税優遇措置を廃止する。

失業保険と解雇権

政府は、失業保険法を現代化するための法案を2005年末に提出するよう計画している。社会経済審議会の勧告に基づき、政府は失業手当の最長受給期間を5年から3年2カ月に削減する。期間の短縮は、失業手当が一時的で、仕事と仕事を繋ぐ架け橋であることを強調するものである。政府はまた、解雇に関する規制を緩和する。企業にとっては、従業員を環境の変化に適応させるだけでなく、労働者を迅速、簡易に採用する必要がある。企業は、解雇が容易なら、採用により積極的となる。先任権原則は改正され、最も新しい労働者を最初に解雇する必要がなくなる。これは、若年者や再就職をめざす者の就職状況を改善すると予想される。労使は、組織再編に際し、企業と労働者の特別の利害を考慮し、独自の労働協約を締結する権利を有する。

解雇手続きを簡素化するため、失業手当の受給資格に必要な有責証明が制限される。将来的には、必要な解雇は、失業手当の受給権を没収されることなく、使用者と労働者の相互の同意で実施できるようになる。

福祉と障害者のための仕事

2004年1月1日に施行された仕事と福祉に関する法律は、2004年の福祉手当受給者数を、当初予想された39万人から 33万7000人に減少させた。同法は、地方機関に権限と裁量を与え、社会保障受給者の仕事を見つける可能性を増大させた。有給の仕事が見つからない人々に就業経験を与えるための特別の政策も提示された。これには、就労期間中も福祉手当を満額受給する方法と、使用者が賃金費用に見合う補助金を受け取る方法の2つがある。

障害者のための仕事に関する法案が2006年に提出される。障害者のための職場は、障害に適応する特別の労働環境を必要とする人々だけに用意される。こうした職場を数多く監督している地方機関は、財政的なボーナスを受け取ることができる。

学習と就労

社会問題雇用省と文部科学省は、「学習と就労」と呼ばれる新しいプロジェクトを設置する。このプロジェクトは、1万5000件の徒弟制度の仕事や職業相談・監督のための地域インフラの整備など、関係団体間の地域協力を推進することを目的としている。仕事と所得のための審議会の勧告に従い、政府は、低技能の失業者のための学習と就労経験に関する制度の財政的インセンティブについて調査を行う。さらに、若年者の欠勤による使用者の財政的リスクを除去する試験的プロジェクトを導入する。

若年失業タスクフォースは、2007年までに若年者向けに4万件の新規雇用を創出する仕事を委託されている。目標は、若年失業者や中途退学者を6カ月以内に学校や職場に戻すことである。

移民

2005年初めに、政府は、「社会的結束のための広範なイニシアティブ」を導入した。このイニシアティブは、社会環境を改善し、市民と社会の結束を強化することを目的としている。政府、労使団体、経営者組織、マイノリティー組織や利害関係者によって、仕事の領域における数多くの建設的な行動事項が形成された。これらは、移民の雇用を増加させ、労働市場における差別を防止することを目的としている。さらに政府は、PAVEM(マイノリティ・グループからの移民女性の参加を意味する)委員会が開始した活動の進捗を監視するために、移民の女性と雇用に関する運営委員会を設置した。開放と統合のための行動計画は、今後数年間に2万人の女性を語学コース、会議、職業訓練に参加させることを目標としている。行動グループは、オランダの30の地方自治体と緊密に連携している。

出所

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