2004年前半、4119人の看護師が海外へ
労働雇用省(DOLE)は、11月15日、2004年前半に海外へ渡った看護師はおよそ4119人であると発表。行き先は、サウジアラビア、英国、米国、アイルランド、シンガポール、クウェート、アラブ首長国連邦、台湾、バハマ、バーレン、カナダ、マリアナ諸島、キプロス、エジプト、イスラエル、ヨルダン、リビア、マレーシア、モルディブ、オーストラリア、ニュージランド、オマーン、パラオ、カタール、サイパン、スーダン、イエメン、スペイン等。イムソン労働雇用相代理は、日比両国間でFTA(自由貿易協定)が最終合意したことに対し、歓迎の意を表すと同時に、日本政府による外国人看護師の採用はまだ始まっていないと説明した。
最も多くのフィリピン人看護師を雇用しているのは、サウジアラビア。次いで、英国、クウェート、米国、アイルランド、シンガポールとなっている。イムソン労働雇用相代理は、「フィリピン人看護師は、今後、局地的ではなく、世界的に必要とされる」と主張。さらに、日本におけるフィリピン人看護師・介護士の雇用の実現に一歩近付いたとして、日比両国間でのFTAの合意に対し、歓迎の意を表した。しかしその一方で、まだ協定の正式調印はなされておらず、現段階では、日本でのフィリピン人看護師・介護士の雇用はないことを強調。日本での就業を希望している看護師・介護士に対し、違法就職あっせん業者、特に「日本での雇用を保証する」と謳っている介護士訓練センターに注意するよう呼びかけた。
高給を求めて国を去る看護師・介護士の数は増加傾向にある。海外雇用庁(POEA)によれば、2003年の海外出稼ぎ労働者(OFW)のうち、新たに雇用された看護師・介護士の数は、2万7846人。2002年から61.4%も増えている。一方、少子・高齢化の進む先進諸国では、国内の看護師・介護士不足を外国人労働者で補う動きが顕著だ。POEAのデータによると、英国に派遣されたフィリピン人労働者は、2003年通年で2489人。そのうち、看護師と介護士は、2055人で、全体の81.4%にも上るが、英国政府はフィリピンに対し、今後も、看護師や介護士、助産婦の派遣をさらに増やすよう求めている。
このように海外での需要が多く、給与等の条件が良い看護師や介護士は、フィリピン人医師にとっても魅力的だ。医師から転向して、看護師や介護士の資格を新たに取得し、海外就労を目指すケースがあとを絶たない。こうした現状について、サントトマス労働雇用相は、「看護師や介護士の志望者が多く、国内の市場が供給過剰な状態になっており、それが原因で給与が低くなっている」とし、「医療従事者の海外流出が進めば、国内に残った医師や看護師の給与が逆に上昇する」という見解を示している。優秀な医師や看護師の海外流出が、国内の医療体制の崩壊を招くと、危機感をつのらせるダイリット保健相とは、全く正反対の考えだ。
海外労働者の中でも、他の業種に比べ比較的賃金の高い医療関係従事者は、フィリピン経済にとって、外貨獲得の重要な担い手だ。イムソン労働雇用相代理は、「労働力の送り出し国として、フィリピンが世界のトップに立てる強さを築き上げるために、熟達した英語力、勤労意欲、西欧やその他の文化に対する適応能力の向上など、我々は、グローバルトレンドに沿った教育・訓練を行い、求められている専門性を維持する努力を始めなくてはならない」と強く主張し、「サービスの輸出」の拡大に意欲を示している。このように質を向上させながらサービスの輸出を促進し、それと同時に国内の医療体制を維持・向上させることは可能なのか。これが大きな課題となりそうだ。
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