新政権下で50万人がマレーシアから強制送還か

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2004年9月

7月下旬、マレーシアに移民していたインドネシア人の数百人規模の集団がインドネシアの港に相次ぎ到着した。現地ジャカルタ・ポスト紙が報じた。彼らがマレーシアから強制送還されたのか、自発的に帰国したのかは明らかにされていない。しかし近い将来、マレーシアで不法就労していたインドネシア人50万人が強制送還されることになっている。大統領選挙の決戦投票を9月20日に控え、大量の帰国者受け入れにより治安上の問題の発生をおそれたインドネシア側の要請により、この大量送還は決戦投票後に行われる予定。

8月2日、9日付けジャカルタ・ポスト紙が報じたところでは、今回の移民集団の到着は7月27日と31日の2回。2回目の到着では630人が定員300人の船に乗り込んで、タンジュンウバン港(ビンタン島)に到着した。全員が不法就労者で、マレーシア当局による事業主や盛り場の「手入れ」により逮捕され、投獄されていたという。

マレーシアでは2002年に移民に関する新法が導入されるなど、不法就労の規制が強化されている。不法移民の母国への強制送還もたびたび行われており、インドネシアへは2年前に数十万人という最大規模の送還が行われた。当時は帰国者のうち数万人が、帰郷しても職がないため再びマレーシアに渡ろうとして、マレーシアとの国境の町ヌヌカン(カリマンタン島)に滞留した。しかし町の住民数を超える帰国移民の滞留は、衛生環境や食料事情の悪化、乳幼児を含む死者の発生など、様々な問題を引き起こしたという(注1)。

大統領選挙の決戦投票後に予定される50万人の移民送還は、それ以来の大規模のものとなる。しかしインドネシアの雇用情勢は改善されておらず、移民が無事インドネシアに帰国できたとしても、帰国者の多くがそのまま失業者になってしまう可能性が高い。

今回の630人の受け入れを処理したタンジュンピナン労働・社会保障局は、来るべき大量送還への対応のために移民派遣会社2社を任命した。しかし「まだあまり多くの準備ができていない」と、担当者はジャカルタ・ポスト紙に語っている。50万人の帰国者と、それを受け入れる住民の生活と雇用の問題は、まもなく誕生するだろう新政権にさらに大きなプレッシャーを与えることになる。

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