地方自治体改革

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  • 国別労働トピック:2004年8月

(1)県(アムト)、コムーネ(市)の再編成

2004年6月24日、デンマーク政府は、デンマーク国民党の支持を得て、2007年1月1日を目処に、県及びコムーネの大々的な再編成を目的とした地方自治体改革の実施を決定した。

同改革は、1.現在の16の県を廃止し、5つの「リージョン」に再編成、2.3000人から50万人と人口が大きく異なる現在の175の市については、人口規模3万人を基準として再編成(合併)するというもの。

また、2007年1月1日以降、コムーネは従来どおり市民税を課する権利(課税権)を保持するが、再編成され新たに発足するリージョンには課税権が付与されず、リージョンが所轄する事業の財源は、国からのブロック助成金及びコムーネからの補助金により確保される。

  1. リージョン新たに発足する広域行政機構である「リージョン」は、1.首都圏リージョン(ボーンホルムを含む)、2.ショエラン・リージョン、3.北ユトランド・リージョン、4.中部ユトランド・リージョン、5.南ユトランド・リージョンの5つである。
    1. 行政所轄事項
      • 医療(家庭医、精神医療を含めた病院、医療保健)
      • 公共交通機関の整備(地域を単位とした公営バス会社の設立)
      • 地域開発計画(都市計画、自然・環境・産業・観光・雇用・教育・文化等)
      • 特殊施設の整備(社会的弱者や障害者など)
    2. 財源

      リージョンには課税権がないため、例えば医療財源は、1.8%の健康保健税(国税)、2.コムーネから計上される補助金(市民1人当たり最高1500クローネ)、3.補助金加算(医療機関の利用頻度に基づいた加算)により確保される。リージョンが所轄する他の事業の財源は、ブロック助成金(国庫補助金)及びコムーネが計上する開発補助金により確保される。

  2. コムーネ
    1. コムーネに移管される事業
      • リハビリ(入院中のリハビリは除く)
      • 職業紹介(コムーネ及び職業紹介所が共同で新規に設置するジョブセンターが担当。(下記ジョブセンターの項参照)
      • 社会福祉事業全般
      • 特殊児童施設(情緒障害児、社会的障害児)
      • 重度障害児を対象とした特殊教育
      • 成人を対象とした特殊教育
    2. 人口規模
      • 基本的に人口3万人以上とする。
      • 人口3万人以下の市(コムーネ)は、一つあるいは複数のコムーネと拘束力を持った行政に関する協力関係を樹立。
      • 人口3万人以下のコムーネが他のコムーネとの合併を望まない、あるいは他のコムーネとの協力関係を樹立しない場合、関係当局は合併を強制することができる。
    3. 拘束力を持った行政協力

      人口3万人以下のコムーネは、近隣の一つあるいは複数のコムーネと行政協力に関する取り決めを締結することが義務づけられる。例えば、特定の事業を他のコムーネに委託する一方、行政的・経済的責任は本来のコムーネが負うというのが基本的な形態である。ただし、特定の事業を他のコムーネに委託する場合、委託取り決めに関わる複数のコムーネの人口が3万人以上であることが条件とされる。事業委託の分野として、1.雇用促進対策、2.社会福祉サービスに関する需要判定、3.特殊教育、4.リハビリ(入院中のリハビリは除く)等があげられる。

  3. 国に移管される事業
    • 後期中等教育(普通高校、HF)。将来、これらの教育機関を独立法人化。
    • 成人教育(VUC)及び準備成人教育(FUV、語盲教育を含む)、看護師教育、放射線技師要請教育、社会福祉専門職員養成教育(社会福祉アシスタント、ヘルパー)
    • 従来の県立知識センターなど
    • 包括的な道路計画、公共交通機関(ただし、リージョンが設立する公共交通公社を除く)
    • 課税・徴税業務
    • 現在、県が所轄する環境・都市計画・文化事業

(2)ジョブセンター

地方自治体改革により、職業紹介所(AF)(注1)は2007年1月1日以降、コムーネの労働市場課に吸収され、失業者及び生活保護受給者を対象とした職業斡旋事業は、コムーネに新たに設置される「ジョブセンター」が統括して担当することになる。

  1. パイロット・プロジェクト

    同制度改革は、雇用促進事業の効率化を目的としているが、改革の第一段階として、コペンハーゲンをはじめとして人口規模が大きな10のコムーネにパイロット・プロジェクトとして「ジョブセンター」が開設され、雇用促進事業が展開される予定。その後、パイロット・プロジェクトの評価・調整の過程を経て、各コムーネにジョブセンターが開設される。

  2. LOのコメント

    職業紹介制度の改革については、社会民主党や労働組合側から批判が寄せられているが、特にLO内では反対論が根強く、次のような声明を発表している。

    「労働市場政策の責務をコムーネに移管することは、全くナンセンス。コムーネは、自治体内の狭い労働市場を視野に職業紹介事業を展開するであろうし、本人に適した職あるいは活性化プログラムを提供することがより困難になることは明らかだ。政府及び自治体の雇用促進対策を厳しく監視し、失業者の権利を守ることが我々の重要な課題となるだろう。」

(3)地方自治体改革のタイムスケジュール

  1. 2005年1月1日:合併または拘束力を持った協力関係についてコムーネ間で合意。
  2. 2005年7月1日:新しいコムーネの決定
  3. 2005年11月
    • 統一地方選挙(新規リージョン議会、新規コムーネ議会)
    • 合併コムーネの議会は、2006年末日まで機能。
    • 合併後、新規に発足したコムーネ議会は、2006年度は合併準備委員会として機能し、コムーネの合併準備作業を担当。
  4. 2007年1月1日:地方自治体改革の実施

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