2004年の賃上げ交渉で賃金の凍結に合意する企業の増加傾向

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年7月

賃上げ及び労働協約改訂交渉の5月末現在の進捗状況をみると、従業員100人以上の企業5909社のうち、賃上げ交渉が妥結したのは1118社で2003年(1302社)より少ないが、平均賃上げ率は5.2%で2003年より1.5%下がった。5月末時点の平均賃上げ率の推移をみると、2000年同期の7.4%をピークに6%台に落ち着き、2004年同期には5%台に下がるなど、賃上げ率の低め安定化傾向が定着していることがうかがえる。

企業規模別に平均賃上げ率の下げ幅をみると、従業員1000‐4999人の企業は前年同期の7.1%から4.4%へ、5000人以上のそれは6.1%から4.9%へ、300人未満は6.5%から5.5%へと下がっており、大企業ほど下げ幅が大きい。

賃上げ交渉が妥結した企業1182社のうち、賃金の凍結・削減に合意したのは235社で前年同期(1302社のうち179社)より7.3%増えている。賃金の凍結・削減に合意した企業の86%は300人未満の中小企業である。内需不振の影響をもろに受ける中小企業ほど、賃上げよりは雇用を優先する傾向が強いことの現れである。

労組の有無別にみると、労組のある企業3133社のうち、賃上げ交渉が妥結したのは428社で、そのうち賃金の凍結・削減に合意したのは124社に達している。これに対して、労組のない企業の場合、2776社のうち、690社で交渉が妥結し、そのうち111社で賃金の凍結・削減に合意している。

一方、従業員5000人以上で労組のない大手企業のうち、唯一賃金の凍結に合意したケースとして注目されるのは鉄鋼メーカーのポスコである。同社は2003年に売上高14兆3593億ウォン、純利益1兆9805億ウォンを達成し、会社創立以来最高の経営業績を記録した。2004年に入ってもその勢いは止まらず、第1四半期の売上高、営業利益ともに、前年同期対比で30%以上の伸びをみせている。

そういうなかで、同社の労使は5月12日、2004年の賃上げ交渉で「賃金を凍結し、営業利益の5.5%を成果給として支給する」ことで合意したと発表した。今回の合意の背景について、同社の労使は「設備投資の拡大による雇用創出のほかに、非正規労働者及び下請け中小企業労働者との賃金格差の縮小にも貢献するためである」、「経営成果配分制度が定着し、生産性及び経営業績の向上に見合った成果の配分が保証されるという信頼感が共有されていることが大きい」と述べている。

このケースは労使政委員会で合意された「雇用創出のための社会協約」の趣旨に沿うものである。つまり、経営業績が好調な独占大企業の正規労働者側が賃上げよりは経営成果の配分や雇用創出に軸足をおくことで、賃金及び労働条件の改善と社会貢献を同時に実現する道を模索する新たな試みと位置付けられるのである。

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