第92回ILO総会
―公正なグローバル化の推進を強く支持
第92回ILO総会は6月7日、グローバル化の社会的側面に関する世界委員会報告書「公正なグローバル化:すべての人への機会の創出(A Fair Globalization: Creating Opportunities for All)」について討議した。世界委員会共同委員長のハロネン・フィンランド大統領、ムカパ・タンザニア大統領ほか、ルヴァノフ・ブルガリア大統領、クラーク・ニュージーランド首相、ILO理事会労使副議長等のハイレベル代表らも出席。ILOは、報告書を、公正なグローバル化を目指す新しく一貫性ある政策基盤と位置付けている。
グローバル化の社会的側面世界委員会は、グローバル化の公正な統治のあり方を模索するために2001年11月の理事会により設置された独立の外部委員会で、共同委員長を筆頭に、政労使、学識経験者等26名の委員の参加を得ている。2月に発表した報告書は、経済成長への貢献等グローバル化のプラスの効果を認める一方で、格差の拡大、貧困といった問題が根強く残り、公正でないことを指摘。グローバル化の適正な統治方法を早急に再検討するための各種措置を提案している。具体的には、グローバルな目標としてのディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の普及、ILOの他の経済機関との連携、各国・国際レベルでの民主的で説明責任のある統治の実施、政労使三者対話と合意形成の促進、貿易と金融に関する公正なルール及び国際金融構造改革の実施、開発支援の増大などを挙げている。
今総会でソマビア事務局長は、公正なグローバル化及び貧困半減のミレニアム開発目標の実現に向けてILOが取り組むべき課題として、1)ディーセントワークを世界目標とすること、2)グローバル化を形作るうえで、ILOを世界のキープレーヤーとすること、3)世界的な行動に向けて政労使三者を動因すること、4)公正なグローバル化の追求に向け、ILO全体を「真にグローバルなチーム」とすること、の4項目を挙げた。
そのうえで同氏は、世界委員会報告のフォーローアップとして今総会に提出した報告書「公正なグローバル化:ILOの役割(A fair globalization: The role of the ILO)」に言及。すべての者にチャンスを提供する公正なグローバル化の探求は、今後10年の国際問題となると述べた。同報告書は、ディーセントワークの実現、グローバル化に対処する国内政策の構築、生産システムにおけるディーセントワークの推進等を提案。また、政労使対話、発展・投資・雇用・移民に関する総合的な政策立案、国際労働基準の強化、実際の活動に向けたILOの役割の重要性も強調している。
こうしたILOのグローバル化への対応のなかで繰り返されるスローガン「ディーセントワーク」。これは、1)労働基準ならびに労働における基本的権利・原則を満たし、2)公平に適正な雇用を確保する機会があり、3)社会的保護を受け、4)三者構成と三者対話の強化により下支えされる―仕事だ。ILOが担うのは、市場原理のみで拡大しつづけるグローバリゼーションに、ディーセントワークの普及により社会的・人間的な視点から歯止めかけていく役割だ。問題は、この壮大な理想を、実際のILO活動にどう反映していくか、それを定着させるために各国をどう牽引していくかにある。各国の積極的かつ主体的なコミットメントや協力が不可欠だ。
ソマビア事務局長は最後に、「観念的になりすぎないよう注意すれば、公正の実現に向けて大きなチャンスがある」と述べ、対話や協力を通じて、全関係者が、公正なグローバリゼーションに向けて「責任」を果たすことが重要だと訴えた。
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