失業率5.9%、過去16年間で最悪

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2004年3月

人材開発省(MOM)が2003年12月15日に発表した「第3四半期・労働市場報告」によると、9月末時点の失業率(推定値、季節調整済み)は5.9%で、6月末の4.5%から急上昇した。過去15年で最悪を記録した2002年9月末の4.6%をも大きく上回った。

まず雇用者数を見ると、全体ではSARSの影響を受けた第2四半期の2万5963人減から大きく改善して900人増となり、9四半期ぶりにプラスに転じた。特にサービス部門は3025人増で、第2四半期の-1万2149人から大幅に改善した。

四半期別の雇用者数の増減(人)
  2003年
(特) (監) (企)
合計 -4089 -2万5963 900
製造業 -2592 -6448 -1872
建設業 -6453 -7117 -1872
サービス 5111 -1万2149 3025

(出所)人材開発省

ところが失業率は、労働市場が求職者を十分に吸収できず、2003年9月末時点で5.9%と過去16年で最悪を記録した。6月末時点では、新型肺炎SARSの影響で経済活動が落ち込み、労働市場も低迷したが、多くの求職者が就職活動を延期・中断し、職業訓練や自己啓発などを行っていたことから、予想以上に失業率は低かった。その後、非労働力人口が労働市場に戻ってきたために、9月末の失業率が急上昇したとMOMはみている。

なお、ここ数四半期の失業率を見ると、2002年12月末は4.2%、2003年3月末は4.5%、6月末は4.5%と、ほぼ横ばいで推移していた。

四半期末毎の失業率(%、季調後)
2002年 2003年
3月 6月 9月 12月 3月 6月 9月
4.5 4.3 4.6 4.2 4.5 4.5 *5.9

*速報値(出所)人材開発省

賃金動向については、政労使三者の代表でつくる全国賃金評議会(NWC)が5月、7月1日-2004年6月30日の賃金ガイドラインを発表し、陸海空の運輸や観光、ホテル、飲食、旅行代理店など、SARSの打撃を直接的に受けた企業には、早急に賃金カットを実施するよう勧告した。それ以外の企業で業績が低迷する場合は、賃金の削減と、基本給2%を月次変動手当(MVC)に振り替えるよう提言している。

電子分野の就職斡旋、政労が協力

労働力開発庁(WDA)は、全国労働組合会議(NTUC)および電子・電機産業労連(UWEEI)と協力して、電子分野の就職斡旋を行う。高い失業率を改善するのが狙いで、同分野の雇用機会を失業者に積極的に提供する。

WDAによれば、現在約1000人の雇用機会が提供されており、向こう6カ月間にさらに半導体部門などを中心に2500人の雇用機会が創出される見通し。

NTUCの副書記長で、UWEEIの書記であるヘン・チーホウ氏は、面接を受けるための研修などを求職者に提供するなど、あらゆる支援を行う意向を表明した。

WDAのレオ・イップ最高責任者によると、交代勤務が一般的なためシンガポール国民は電子産業を避ける傾向があったが、ここ3カ月ほどはこうした傾向も改まりつつあるという。

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