2003年10月の失業率、1月の水準に戻るも、若年層の失業者数は増加の傾向

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2004年3月

NSO(国家統計局)の発表によると、2003年10月の失業率は、前回調査時(2003年7月)から2.5ポイント増で、1月の水準に戻った。その一方でNSOは、15歳から24歳までの若年層の失業者数が2002年で250万人に達し、今後も増加傾向にあるという見通しを示した。

労働力統計
  2003年10月 2003年7月 2003年4月 2003年1月 2002年10月
15歳以上の総人口(千人) 52,299 51,990 51,596 51,280 50,841
労働力人口(千人) 35,078 34,850 34,635 33,678 33,674
就業者数(千人)
就業率(%)
31,524
89.9
30,451
87.4
30,418
87.8
30,119
89.4
30,251
89.8
失業者数(千人)
失業率(%)
3,554
10.1
4,399
12.6
4,217
12.2
3,559
10.6
3,423
10.2
不完全就業者数(千人)
不完全就業率(%)
4,967
15.7
6,314
20.7
4,733
15.6
4,849
16.1
4,627
15.3

出所:国家統計局

フィリピンの2003年10月の失業率は、前年実績を5000人下回る355万4000人で、2003年1月の水準に戻った。年齢別にみると、15~24歳が全体の44.9%で最も多く、これに35歳以上(29.4%)、25~34歳(25.7%)と続いている。フィリピンでは、15~24歳の若者の失業者数は年々増加傾向にあり、DOLE(労働雇用省)は、1998年から2002年までの若年層の失業者数に関する調査結果を発表した。

同省の発表によると、フィリピンの15~24歳の失業者数は、2002年には253万人で、1998年の201万人から50万人余り増加している。失業率では、この5年間に21.0%から24.2%に上昇している。失業者の5人に3人が都市部に住む男性で、学歴をみると、高卒者が全体のほぼ半数(1998年:48.0%,2002年:46.6%)、大卒者は約4割(1998年:34.6%,2002年:39.5%)で、高学歴で就職していない若者が増加している。また、女性の失業率の方が男性より常に高くなっていることも注目すべき点のひとつである。

フィリピン若年者失業率

(1998年~2002年)

図:1998年から2002年のフィリピン若年失業者数の推移

  1998年 1999年 2000年 2001年 2002年
男女(%) 21.4 21.0 24.2 23.3 24.2
男性(%) 19.5 19.1 22.1 20.8 21.8
女性(%) 24.7 24.4 27.9 27.4 28.0

出所:国家統計局

こうした状況の原因には、若年者の技術あるいは訓練不足が労働市場の需要に適さないということのほか、彼らが積極的に就職活動を行ってないケースもあるとしている。若者の失業者のうち、就職活動を行っているのは全体の3分の1にすぎないという。こうした若年層の失業者の多くは、雇用者側と直接コンタクトをとったり、知人などの紹介で職をみつけたりしており、就職の斡旋等の政府による支援策が十分に活用されているとはいい難い状況にある。

同省は、若者が職をみつけることに困難さを感じていることを指摘し、彼らがもっと「仕事」の世界へ踏み出しやすくなることに焦点を当てた雇用政策の策定が必要であるとしている。例えば、技能訓練プログラムやOJTプログラム、インターンシップ制度などである。また、ドリロン上院議長(労働雇用相経験者)は、タイ政府が中小企業への資金援助を行うことによって雇用創出に成功した例を挙げ、政府は労働市場の受け皿としての中小企業設立を積極的に支援するべきであると提案した。

フィリピンをはじめとするアジア諸国における若年層の失業者数の増加は、今後予想されうる人口増と合わさり、同地域の経済発展を脅かすと懸念されている。また、失業が若者に与える心理的影響も無視できない。失業により自尊心を傷つけられ、社会からの疎外感を感じながら貧困にあえぐ若者の存在は、社会全体の問題となっている。経済的発展および社会的安定の実現とむすびつけて、若年層の失業問題に取り組むことが喫緊の課題である。あわせて、労働市場の需要に即した職能技術者の育成が必要といえる。

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