改正雇用法案:企業にセクハラ担当の指名を義務化

カテゴリー:労働法・働くルール労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年10月

人的資源省は、1955年雇用法の改正により、各企業にセクハラ担当者の指名を義務付ける方針を明らかにした。担当者は、労使との連携を取りつつ、被害者の相談役として問題解決の役割を果たすほか、各セクハラ事案の調査、懲罰措置、法的措置に関する助言も行う。担当者に必要な資質は、1)心理や人間関係マネジメントに対する経験・知識、2)従業員からの信頼.各事案を処理するうえでの専門性や客観性――など。また、指名を怠った企業に対する罰則について人的資源省は、安全衛生委員の任命義務懈怠の場合と同様に、6カ月の懲役もしくは(及び)RM5000の罰金に処する方向で検討している。改正法案は、政労使三者構成による国家労働諮問会議(NLAC)での審議を経て、今年末にも国会に提出される見通しだ。

これに先立って、人的資源省が1999年に導入した行動規範は、1)セクハラの定義、2)セクハラの形態、3)企業内セクハラ対処策、4)セクハラ防止に関する政策綱領、5)苦情処理手続、6)職場規律及び罰則、7)被害者保護・救済措置、8)セクハラ防止普及・宣伝活動、9)労組の関与――など、より広範にセクハラに防止に向けた指針を盛り込んでいる。今回の改正法案は、同規範の実効性を職場サイドから確保する位置付けだ。同規範によると、セクハラには、1)性的な言動に対する対応により労働者が労働条件上不利益を受ける「対価型」、2)性的な言動により労働者の就業環境が害される「環境型」――の2つの範疇があり、その形態については、言動のみならず、視覚的・心理的なものまでさまざまだ。同規範の内容は、NLACで協議の上、労使の賛同を得たもので、人定資源省は、セクハラに関するガイドラインとして、企業に遵守を求めている。

人的資源省が2003年に受理したセクハラ事案はわずか10件。だが、同省は、セクハラの場合、被害者が誰にも報告できず抱え込んでしまうケースが多いことを配慮し、今回の法案作成に踏み切った。これに対し、シャムスディン・バーダンMEF(マレーシア経営者連盟)事務局長は、同法案に消極的な姿勢を表明。同氏は、「1999年に政府が導入した行動規範やMEFが企業向けに策定したセクハラ・ガイドラインに沿って、各企業は、独自の手続きで職場のセクハラ事案を十分コントロールしている」と述べている。一方、ザイナル・ランパックMTUC(マレーシア労組会議)委員長は、改正法案を基本的に支持。その上で、被害者保護の一層の強化を目指し、人的資源省に対し、2001年に見送られたセクハラ防止法制定への努力を求めた。

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