労働時間延長問題
労働時間延長に関する議論
多くの欧州諸国と同様、オランダにおいても労働時間延長の必要性や期待についてさかんに議論されている。現在、オランダの年間総労働時間は1340時間であり、欧州平均1615時間、米国1815時間に比してかなり短くなっている。これはオランダにパートタイム労働者が非常に多く存在していることも影響している。
ブリンクホルスト経済大臣は、生産性向上や経済成長を促進するため、労働時間を延長する必要があるとし、7月9日議会に提出した「成長への選択」と題するメモの中で、民間、公務員を問わず、週40時間労働制への回帰は避けられないものであると主張した。また、デンマークのように労働者を解雇しやすくする制度の導入や高齢者が65歳以降も労働市場に参加し続ける必要性を強調した。
オランダ産業経営者連盟(VNO-NCW)は、ブリンクホルスト経済大臣の見解を支持している。労働組合、とりわけオランダ労働組合連盟(FNV)は、労働時間延長を時代遅れで過去に逆戻りするような試みであると強く批判した。また賃上げを伴わない労働時間の延長に強い懸念を示し、週40時間労働への延長は11%の賃金上昇を引き起こすであろうと警鐘を鳴らしている。
欧州SMEAD社の週40時間労働制に反対する判決
こうした折、欧州SMEAD社(事務機器製造)は、経費節減のため、2つの工場(従業員数約140名)において、賃上げなしに週労働時間を36時間・38時間から40時間に引き上げようとした。労働組合は、提示された労働時間の延長は、グラフィック、芸術、情報、メディア産業の団体協約に抵触するとして提訴した。会社側は、2002年末にグラフィック産業労働者の加盟資格は取り消されており、団体協約はSMEAD社に適用されていないと主張した。フロニンヘンの裁判所は、労働組合の主張を支持し、SMEAD社における週40時間労働制の導入を差し止める判決を下した。団体協約はSMEAD社にも延長適用されており、140名の従業員の大多数が自発的に労働時間の延長に同意した証拠はなく、団体協約の条項に反するいかなる合意も効力を有しないとされた。裁判所は、SMEAD社に、団体協約不履行に関する損害賠償金として労働組合に対し1万ユーロを支払うよう命じた。
会社側をこれを不服としているが、判決には従う旨の声明を出した。オランダ産業経営者連盟(VNO-NCW)は、裁判結果に落胆を表明し、困難な状況の企業により柔軟に対応する機会を与えるよう、団体協約の条項を整備すべきであると主張した。労働組合側は柔軟性のある団体協約に反対はしていないが、一方で賃下げ競争を避けるため、産業レベルの賃金協約を維持したいとしている。
欧州SMEAD社のワークス・カウンシルは、労働組合は、この問題で労働者と会社側が合意していた問題で、重要な評価を得るのに失敗したと主張している。
参考
- EEO(欧州雇用観測所)ウェブサイト
- EIRO(欧州労使関係観測所オンライン)
関連情報
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2004年 > 10月
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > その他の国 > オランダの記事一覧
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 非正規雇用、労使関係、労働条件・就業環境
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > その他の国 > オランダ
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > オランダ
- 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > オランダ