下請け会社に採用されたスロバキア人れんが工に遡及賃金支払い

カテゴリー:外国人労働者労使関係

スウェーデンの記事一覧

  • 国別労働トピック:2004年1月

労組の介入の結果、ルーレオ市の製鉄所でわずか時給13~18クローネ(注1)で働いていた93人のスロバキア人れんが工が、遡及賃金5万クローネを受け取った。

スウェーデン製鉄は、ルーレオ市のコークス炉を修理するためにれんが工を募集したが、国内で採用できず、ドイツのティッセン社に工事を依頼した。ティッセン社はさらにスロバキアのテルモスタフ社に依頼し、テルモスタフ社は93人の労働者を派遣した。

しかしテルモスタフ社が下請け業者を通して93人の労働者を雇っていたことまでは、スウェーデンの人々は知らされていなかった。労働協約で定められた最低賃金である時給137クローネを大幅に下回る賃金が支払われていたことが分かったのは、スロバキア人労働者に十分な安全装置を与えなかったため、1人が倒れて焼死した事故によってである。テルモスタフ社が93人のスロバキア人労働者に遡及賃金を支払うまで、同じ工事現場で働いていた建設業労働者組合の組合員は職場放棄をした。建設、建築業では、何層にもわたる下請け関係が形成されることが多く、労働者を実際に雇用している会社が提示した労働条件を労組が把握することを困難にしている。

域内で自由な労働市場を形成するEUにバルト諸国や中央ヨーロッパ諸国が加わるようになっても、このような困難が減るわけではない。ドイツ、オーストリア、フランスのように労組の力が弱くなっている国々は、自由な労働移動を実施するまでに長い移行期間を設けようとしている。スウェーデンでは、政府も労組も自由な労働移動を即時実現すべきだという姿勢をとっている。労組は、労働組合に力があり、労働協約を順守させることによって、労働条件を制御することができるという自信を持っている。また政府は、高齢化を緩和するために労働者の流入を必要と考えている。スウェーデン労働組合総同盟(LO)も、引退者1人に対し現役労働者2人の比率を維持するために、今後30年間に毎年12万人から15万人の移民の純流入が必要と考えている。

LOは、労組支部の役割を強化し、ポーランド人やバルト諸国の季節労働者や臨時労働者を多数集めている農業、建設、レストラン産業における労働協約順守状況を監視しようとしている。

もっともLOは、移民労働者の社会権を守る法規制を政府が厳格化しないならば、一定の移行期間が必要であると主張する。LOは、国際的な労働移動を可能にする条件として、EUに新たに加盟する諸国からの労働者に関する法、規制、労働協約が順守されているか政府が監視することが最も重要であるとする。とりわけ、労働者派遣会社が、外国人を自営業者として派遣し、大変低い賃金を払い、使用者が負担すべき給与税を脱税しており問題になっているが、これは現行の規制内で十分に取り締まることができるとLOは考えている。

2004年1月 スウェーデンの記事一覧

関連情報