雇用創出と産業政策

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2003年12月

ベトナムでは農業から工業への産業構造の変換が進展しており、GDPの推移からは、1990年以降着実に拡大している傾向が見てとれる。世界銀行は、ベトナムおよび中国を「移行経済国」としており、第2次産業のGDPに占める割合は増加傾向にある。工業化に伴い外資の占める比率も急増しており、2003年以降はSARS(重症急性呼吸器症候群)等により中国に対する分散投資先としても注目されている。

しかし、労働面からベトナムを見た場合、GDPの急激な伸びと比較して失業率はほぼ横ばいで推移していることからも、経済の好況は必ずしも新たな雇用を創出するに至っていない状況である(表1)。

表1・GDP成長率
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
成長率 5.1 5.8 8.7 8.1 8.8 9.5 9.3 8.2 5.8 4.8 6.8 6.8 -
失業率 - - - - - - 5.9 6.0 6.9 7.4 6.4 6.3 6.0

これらの諸問題に対するベトナム政府の対応として、農村開発プログラム(Agricultural and Rural Development Program : ARDP)、工業・サービス業開発プログラム(Industrial and Service Development Program : ISDP)、労働派遣プログラム(Labor Export Program : LEP)がある。

2005年までの計画としてARDPは2500万人、ISDPは450万人の雇用を創出し、LEPでは10万人の労働力を国外に送り出すとしている。各省は、これらのプログラムを支援することが求められており、雇用を創出する事業についての費用の貸与等各省によって異なる実行計画が実施されている。

1999-2002年のARDPプロジェクトでは職業訓練制度の拡充も重視されており、関係政府機関や国際開発組織との連携の下、2兆ドン(注1)をかけて、農業の余剰人員を対象とした訓練プログラムが実施された。この結果、木工、竹、籐、金属加工、シルクといった伝統工芸品生産に携わることが可能となり、2000以上ある伝統工芸の村々で1000万人以上の雇用が創出されている。

このほか農業規模規制の緩和により、2002年中部高原およびメコンデルタにおいて6万700件、総計36万9000ヘクタールの個人農場が開設された。これらの農場は、果物や野菜などの現金作物や豚、家禽、魚、エビなどの畜産に特化しており、従来の伝統である家族や親類を雇用するのではなく、縁故関係のない技能労働者や無技能労働者が雇用されている。また、体系的な経営の必要な人材として大学卒も雇用されている。

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