中小都市での戸籍制度改革進む
中国では、長期間施行されてきた戸籍移転審査認可制度が順次廃止され、条件付きで実際の居住地に戸籍を移動できるようになりつつある。
この結果、今後、大都市に進出している外資系企業が、高賃金の都市労働者を避け、周辺農村や地方の比較的低賃金の労働者を容易に採用できる可能性が現実的になり始め、関心を集めている。
1.従来の戸籍制度と社会の変化
従来の戸籍制度は1958年より実質的に施行され、農業戸籍、非農業戸籍という戸籍上の区別が厳格に保たれ、農業戸籍、非農業戸籍の間には、雇用条件、住宅の取得条件、教育機会、社会保障制度の待遇などに大きな差別があった。
計画経済体制下、農業戸籍を有するものが合法的に都市に移動できるのは、
- 進学、
- 兵役、
- 限定された条件での労働移動、
などに厳しく制限されていた。
しかし、改革開放後、都市の発展には多くの労働者が必要になり、農村を離れ都市に行く労働者が急増した。公安部の発表によると、全国の移動人口は1億3000万人に達し、そのうち約5000万人が都市臨時居住人口として登録されている。
都市で就労している農業戸籍の労働者は、政府の戸籍制度に関し強い不満を抱き始めた。行政機関も、現実問題として、都市と農村の労働移動が激しく、農業戸籍を持つ労働者の労働移動を厳格に管理することは不可能な状態にあった。
2.都市と農村の戸籍分離制度の廃止地域
政府は、経済発展の一部を担う出稼ぎ労働者の非農業戸籍取得に対する強い要望を無視できなくなり、2001年から戸籍制度の改革に着手した。その内容は、従来の農業戸籍、非農業戸籍という戸籍上の区別を廃止し、戸籍登録は、実際の居住地の行政機関で、「居住民戸籍」登録を実施すればよいことにした。
まず、中小の都市での戸籍の統一政策を試験的に実施し、2003年、戸籍制度の改革に着手した都市は2万都市に達し、中小の都市では約50%が改革に着手した。改革スピードの速い地域は、河南省、江蘇省、重慶市である。
一方、政府は、大都市での戸籍の統一は認めていない。大都市での戸籍制度の統一が認可されるには、治安の維持政策の拡充、教育施設の充実、交通機関・上下水道などインフラの整備などが進むまで、しばらく時間が必要だと見られている。また、大都市での戸籍の統一を認めれば一時的に都市の治安が悪化することも予想されている。
2003年12月 中国の記事一覧
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