2002年の産業別賃金動向

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年11月

労働雇用省(DOLE)は、2002年(注1)の労使間の団体交渉に基づき締結された賃金協定の内容(以下“OWS”と略記)を発表した。今回の発表内容から、改めて、フィリピンの労働組合の賃金交渉に対する影響力の強さが窺える。

1.概況

調査対象は予算の制約上、マニラ首都圏およびその周辺区域に限定された。

調査対象となった全産業の平均賃金(注2)は、1万911ペソだった。

IT系プログラマーの月額平均賃金は2万3783ペソに達し、電気、自動車などの製造業の労働者の2倍以上の賃金を得ていることが明らかになった。

月額基本給与と月額各種手当の支給動向について、労働組合のある企業とない企業とで比較してみたところ、月額基本給与、月額各種手当ともに、すべての産業において労働組合のある企業のほうが高いことが分かった。

また、外資系企業と100%内資系企業では、月額基本給与、月額各種手当ともに、外資系企業の方が高かった。

2.産業別の月額平均賃金動向

(1)有効求人数の増加が著しい業種

カスタマーサービスとテレマーケティング関連の業種が主な調査対象となった。

カスタマーサービス関連業種の月額平均賃金は1万2841ペソだった。最も高かった産業は、保険や民間保険業で1万8875ペソであった。

一方テレマーケティング関連業種の月額平均賃金は1万764ペソで、最も高かったのは、卸売業で1万1747ペソ、最も低かったのは小売業(自動車の販売を除く)で9557ペソであった。

(2) ベンチマークとして選ばれた業種

農業以外の61の産業における経理関連と未熟練労働者の月額平均賃金は、経理が1万955ペソ、未熟練労働者は7751ペソであった。

経理関連で最も高い業種は電力産業で1万9318ペソ、最も低い業種はバス運送業で8290ペソだった。

未熟練労働者については、月額平均賃金が最も高い業種は水道業で1万1500ペソ、最も低い業種は非金属採掘業で6500ペソであった。

(3) IT系業種

コンピュータープログラマーの月額平均賃金は2万3146ペソで、内訳をみてみると、IT系プログラマーが2万3783ペソで、保険・年金関連事業のプログラマーの1万9783ペソよりも高かった。

(4) 製造業およびインフラ関連産業

製造業およびインフラ関連産業の月額平均賃金は8251ペソで、製造業で最も高かったのは電器機器の製造に携わっている整備士1万1180ペソ、最も低かったのは金属板の製造・加工業7210ペソ、自動車製造業は9341ペソであった。

インフラ関連産業では、電力とガス事業が2万1859ペソと最も高く、一方、配管工事業が1万4879ペソと最も低くかった。建設業は8722ペソであった。

表1:産業別の月額賃金表
産業/職種 月額平均賃金(ペソ)
コンピューター・プログラマー 23,146
保険・年金関連プログラマー 19,783
IT関連プログラマー 23,783
製造業及びインフラ関連産業 10,911
電子部品、機器関連の整備士 11,180
ラジオ・テレビ・通信機器の製造 8,941
自動車の製造業 9,341
自動車の製造過程の一部(金属薄版加工業者,その他の作業員) 7,310
生活インフラ(電力・ガス・水道等) 21,859
建設業 7,784

(自動車産業・生活インフラ・建設産業については、表の数値の加重平均をとった)

3.産業別基本給と各種手当

(1) 最低基本給与・最低各種手当(注3

全産業の最低基本日給は250ペソ、最低基本月給は6251ペソだった。また、全産業の最低日当現金手当は30ペソ、最低月額各種手当は782ペソであった。

全産業の平均基本月給は、最低賃金水準を25.4%も上回る8178ペソ、全産業の平均月額各種手当は、最低月額各種手当の水準を15.9%上回る782ペソであった。

産業別の月額基本給および月額各種手当は、電力・ガス・水道産業の水準が最も高く、それぞれ1万5264ペソおよび859ペソであった。

(2) 労働組合の有無の影響

労働組合組織の有無における、月額基本給与と月額各種手当の支給額を比較してみたところ、すべての産業において、労働組合がある企業のほうが両方とも高いことが分かった。

月額基本給与については、29.5%上回る9787ペソ、月額各種手当については、3.35%上回る756 ペソであった。

(3) 労使協定を締結している労働組合の有無の影響

労働組合が存在しかつ労使協定が締結されている企業(注4)と、労働組合が存在するにもかかわらず労使協定が締結されていない企業を、月額基本給与と月額各種手当の支給面で比較してみると、いずれについても労使協定が締結されている企業のほうが、労使協定を締結していない企業よりも高いことが分かった。月額平均基本給与については、27.9%上回る9849ペソ、月額平均各種手当については2.8%上回り900ペソであった。

表2:労働組合と月額基本給与と月額各種手当
  全産業平均 労働組合の有無
労働組合無し 労働組合有り
全体平均 労使協定有り 労使協定無し
月額平均
基本給与(ペソ)
8,178 7,556 9,787 9,849 7,217

(4) 資本構成が与える影響

外資系企業と100%内資系企業を、月額基本給与と月額各種手当の支給面で比べてみると、どちらをとっても外資系企業のほうが高かった。月額基本給与については、外資系企業は内資系企業よりも26.2%高く1万565ペソ、月額各種手当については外資系企業が、内資系企業よりも2.20%高い925 ペソであった。

(5) 多国籍企業・非多国籍企業が与える影響

(6) 輸出志向・国内志向が与える影響

月額基本給与については、輸出志向型の企業のほうが支給額は4.0%高く7870ペソであった。ただし、月額各種手当については国内志向型の企業のほうが高かった。

表3:資本構成と月額基本給与
産業 資本構成 業務範囲の広さ ターゲット市場
月額基本給与(ペソ) 100%内資 外国資本有 多国籍 非多国籍 輸出志向 国内志向
7,798 10,568 12,094 7,817 7,568 7,870

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