政府、コールセンター関係企業での雇用増加を期待
国内外のコールセンター関連の企業が、2003年に入り急速に事業を拡張している。政府は、常時10%以上の高失業問題の改善に苦慮しており、今後この分野で、大幅に雇用が増加することを期待している。
1.概況
貿易産業省の次官で、投資委員会委員長でもあるグレゴリー・ドミンゴ氏は、ITC(Information and Communication Technology)と呼ばれる分野で、今後数年間で、約1万人の雇用が期待されていると述べ、2003年の第1四半期だけで、コールセンター事業への投資額は、18億9000万ペソに達したことを明らかにした。現在コールセンター業務を展開しているのは、国内企業と外資系企業を合せて37社あり、それらは、「フォーチューン500」に選ばれているような優良企業にサービスを提供している。
ドミンゴ委員長によると、2003年に入り、ITC分野で急速に雇用が増加している背景には、フィリピン長距離電話社、グローブテレコム社、デジタルテレコミュニケーション社、バヤンテレコミュニケーション社により、通信のインフラが整備されたことが大きく寄与している。また、多国籍企業からのコールセンター業務の委託が増加している要因として、
- グローバリゼーションのなかで、企業は、経費削減に迫られており、フィリピンは賃金水準が低く、人件費に対する初期投資額を節約できる。
- コールセンター業務を外部委託するうえで重要な、英語の熟達度の高さと米国の文化に対する理解力がフィリピン人労働者にある。
また、貿易産業省のICT部門を担当しているアルメニア・バレストロス氏は、フィリピンのコールセンター産業の現状を次のように概括している。
- フィリピンのコールセンター産業は、2003年の年率100%の成長率を達成する見込みである。
- 投資額は、2000年の5億6600万ペソから2003年の第1四半期には65億2000万ペソに増加した。
- 営業収入は、2000年の1億7300万ペソから2004年には86億4000万ペソに達する見込みである。
2.米国の大手2社の進出決定
2003年の大型プロジェクトに、米国のコンバーギス社とウエスタンワッツ社の、フィリピン進出事業計画がある。これは、アロヨ大統領が、2003年5月に、米国を訪問した際、2社の経営陣がアロヨ大統領との会談で明らかにした。
コンバーギス社のジョン・フレークナー社長は、今後数年間で、マカテイ市、クラーク経済特区、スービック経済特区、セブ市に、コールセンターを開設し、8000人から1万人の労働者の募集を実施する予定だと述べた。同社は、マイクロソフト社やヒューレット・パッカード社に、一括支払い請求業務、労働者の福利厚生管理、顧客サービス業務などのサービスを提供している。コールセンター業務量は世界最大と見られ、米国、カナダ、南米、EU、アジア地域で4万4000人の従業員を擁し、2002年の営業収入は23億ドルに達している。
ウエスタンワッツ社のロン・リンドルフ社長は、セブ市にセンターを開設する予定であり、当初採用予定労働者は500人であることを明らかにした。
3.今後の見通し
アロヨ大統領は、政権発足後、IT分野での技術者育成政策を実施してきたが、IT技術者の養成にはかなりの時間が必要であり、十分な成果を上げていなかった。しかし、ITC分野なら、英語の語学能力が高く、米国の文化に対し比較的理解力のあるフィリピン人労働者は、比較的短期間の研修で業務に適応できると予想され、アロヨ政権は、農・水産業、観光業に続く、3つめの雇用増加分野になるのではないかと期待している。
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