「外国人労働者の雇用等に関する法律」成立

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  • 国別労働トピック:2003年10月

「外国人労働者の雇用等に関する法律」が7月31日に国会を通過し、2004年8月から外国人雇用許可制が施行されることになった。同法律には1990年代以来の外国人労働者問題が凝縮されていることもあって、二つの大きな特徴がみられる。

第1は、既存の外国人産業研修生制度を温存したまま、新たに外国人雇用許可制度を導入するといういびつな形になったことである。政府・与党は当初外国人産業研修生制度を廃止し、外国人雇用許可制を新たに導入する法案を用意したが、中小企業協同組合中央会など経済界の立場を擁護する野党ハンナラ党が外国人産業研修生制度の廃止に難色を示したため、妥協案として両制度を並行して施行することになったのである。

第2は、8月末まで強制退去されることになっていた不法滞在外国人労働者29万人余のうち、不法滞在期間4年未満の22万人余を救済する措置が特別に盛り込まれたことである。この背景には、政府が外国人雇用許可制の導入を前提に不法滞在外国人労働者の一斉強制退去に踏み切ることにしたが、同法律の成立が予想以上に遅れたため、不法滞在外国人労働者を雇っている中小企業の経営に配慮してそのつど強制退去措置を猶予してきたという事情がある。

具体的には、当初の強制退去期限である2003年3月末基準で不法滞在期間が3年未満の16万2000人余に対しては、「雇用安定センターでの手続きを経て就労の資格で、最長2年間働く」ことができるようにし、3年以上4年未満の6万5000人余に対しては、「再入国を保証する査証発給認定書をもらって10月末までいったん出国し、3カ月以内に再入国すれば、既存の滞在期間を合わせて最長5年間働く」ことができるようにするという救済措置が盛り込まれた。そのほかに不法滞在期間が4年以上の者は、11月15日まで自主的に退去すれば2004年8月から施行される外国人雇用許可制に基づいて国内で働くことができる。以上のような不法滞在外国人労働者に関する条項は8月16日に同法律が公布されると同時に施行され、9月1日から救済手続きに入ることになっている。

そして新たに導入される外国人雇用許可制には主に次のような条項が盛り込まれている。第1に、国務総理室に国務調整室長を委員長とする外国人労働力政策委員会を設置し、外国人労働者の受け入れ業種、規模、送り出し国などを決定する。

第2に、外国人労働者は1年ごとに雇用契約を結ぶが、最長3年まで働くことができる。3年後いったん出国して1年以上たってから再入国して再び就労の資格で働くことができる(永住防止のため)。外国人労働者には労働関係法が適用され、労働3権が保障される。

第3に、求人企業は外国人労働者を採用する前に、雇用安定センターを通じて1カ月以上国内労働者の採用に努めなければならない。それでも国内労働者を採用することができなかった場合、人手不足確認書をもらい、外国人労働者を対象に求人の申請を出す。雇用安定センターは求人の要件に合った複数の外国人労働者を推薦し、事業主はそこから適格者を選んで雇用契約を結ぶ。

政府は同法律の施行に当たって、既存の外国人産業研修生制度と外国人雇用許可制が併存することにより現場で大きな混乱が生じることが予想されるだけに、「求人企業に対してどちらか1つの制度を選ぶように制限するとともに、労働部が外国人産業研修生制度関連業務を統括し、本来の趣旨である技術研修に限定して利用するように誘導し、最終的には外国人雇用許可制に収れんしていく」ことを検討している。ただし外国人労働者に頼るほかない中小企業の間では、外国人雇用許可制の導入に伴う人件費の上昇や労働争議の多発などを危惧する声が根強く、既存の外国人産業研修生制度から外国人雇用許可制への移行を促すには新たなインセンティブが必要なのかもしれない。

以上のように外国人労働者関連法制が政治的妥協の産物としていびつな形で施行されるようになっただけに、引き続き政府の補足措置が注目される。

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