ACTU、「労働の未来」報告書を公表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:非正規雇用労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年9月

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は、2003年6月12日に「労働の未来(The Future of Work)」と題する調査報告書を公表した。

同報告書は、働き方や労働条件の現状・変化を把握し、それを将来の政策設計につなげる目的で実施された。ACTUは、報告書の作成をオーストラリア労使関係研究訓練センター(ACIRRT)に委託した。

報告書の概要

報告書は、まず過去20年間に社会や経済の変化とともにオーストラリア人の働く環境もかなり変化したが、今後は不平等の拡大をくい止め、労働者が家庭生活やライフサイクルにあわせて真の選択を行えるよう新たな基準が必要であると指摘する。そして報告書は、職場で起こっている事象を主に7つに分けて分析し、社会的公正を回復するために行動が必要であると主張している。以下では、7項目に分けて報告書の概要を取り上げる。

就業構造と雇用形態の変化: 1990年代には就業構造と雇用形態に大きな変化が見られた。特に低賃金のパートタイム雇用や臨時雇用の増加が特徴的である。その結果、労働市場は高賃金の専門職と低賃金の臨時・パートタイム職に分断されるようになった。
非典型的雇用の増大: 1990年代初頭より使用者は、臨時労働者や契約労働者、派遣労働者を長期間にわたり利用するようになった。たとえば女性雇用者の約3分の1は臨時労働者であり、派遣労働者数は2001年に16万人強となっている。これらの労働者は労働条件面で不利益を受けがちであるため、臨時労働者の68%がより予測できる働き方を望んでいた。
仕事量の増大と労働強化: 週50時間以上働く労働者の割合は1982年に17%であったのが、2002年には21%になっている。また変形労働時間制の広がりが見られる。そして労働者の半数が時間外労働を行い、その6割が対価を受けていない。人員削減や仕事量の増加、労働強化により労働者のストレスも高まっている。
仕事と家庭の両立: 女性の就業率は2001年に62%に達し、家族的責任を負う労働者が増加してきている。しかし労働強化や雇用保障されたパートタイム労働が十分でないために、仕事と家庭の両立が困難になっている。
賃金格差の拡大: 1990年代に賃金格差は拡大し、低所得に分類される労働者の割合が高まっている。
失業と不完全就業: 2002年の平均失業期間は50週間であり、35歳から54歳の男性では86週間にもなる。このように長期失業が依然として大きな課題となっている。またアウトソーシングや民営化、短期の臨時雇用やパートタイム雇用の増加は不完全就業者を増やしている。
技能、教育・訓練: 1990年代に使用者による教育訓練分野への投資は停滞し、2001/2002年度には国家資格につながるような体系的な訓練を提供していた使用者は全体の24%に過ぎなかった。研修生や実習生の受け入れも少なく、また労働者一人あたりの訓練時間数も減少した。

報告書発表のために開催された会議において、コベットACTU書記長は公正な社会を築くために、1.臨時労働者の雇用安定・労働条件改善を図る、2.仕事と家庭生活の両立を進めるための選択肢を提供する、3.低賃金問題に取り組む、4.すべての労働者に団体交渉権を保障することが重要であるとし、各分野での具体的提言を行った。

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