労働災害10%削減が目標

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年8月

スワット労働相は、毎年労働災害を10%削減するために、無災害工場には奨励金を出すという計画を提示した。奨励金を出すことにより、使用者が安全性に対してより注意を払うことになるだろうと述べた。

労組は労働安全研究所の設立を要求

昨年は、19万0979件の労働災害が発生し、650人が死亡した。これにより労災基金から12億3000バーツが支払われた。

計画によれば、労働災害を減らすため、工場はより頻繁に検査されるようになり、そして労働災害がなかった場合には、労災基金支出の削減に貢献したとして奨励金が支払われることになる。

減少しない労働災害について労働組合は、政府に対して労働安全研究所(Labor Safety Institute)の設立を要求している。1993年のKader玩具工場の事故では188人が死亡し、469人の負傷者が出たが、未だ組合が要求している研究所は設立されていない。提案している研究所の設立は、工場の操業状況を監督することにより、労働者の安全を確保する最良の方法だと考えている。前労働相はこの提案を支持しており、政府は労働者の労働条件改善に計画を立て、研究所の設立を率先して行うべきだと発言していた。また数人の与党政治家と野党はこの提案にはメリットがあるとして支持していた。

労働問題を取り扱う民主党のワーキンググループでは、労働安全衛生のための研究所の設立案について議会に提出し、議論する計画である。

表:タイにおける業務上傷害疾病件数の推移(労災補償基金対象)(件)
年・内容 合計 死亡 障害 身体一部喪失 3日を超える休業 3日を超える休業
1994年 186,053 816 13 4,406 61,411 119,407
1995年 216,335 940 17 5,469 67,626 142,283
1996年 245,616 962 18 5,042 78,829 160,765
1997年 230,376 1,033 29 5,272 68,480 155,562
1998年 186,498 790 19 3,714 55,489 126,486
1999年 171,997 611 12 3,396 50,239 117,739
2000年 179,566 620 16 3,516 48,338 127,076
2001年 190,910 613 14 3,135 48,389 138,759

資料:社会保障事務局

1994年労働者災害補償法

(1)使用者が先ず行わなければならないこと

  1. 労災が発生した場合、緊急の治療措置を行うこと(使用者が前払いした分は基金から補償される)。
  2. 負傷し、疾病にかかったとき、その事実を知った日から15日以内に基金事務局(各県社会保険事務所)へ通知すること。

(2)労災基金への拠出金

  1. 使用者が基金へ拠出金を納付して、労働者の労災補償については労災基金から支給される。
  2. 基金への加入は2002年4月1日から従業員1名以上となった。
  3. 拠出金の率は労働者の年間賃金額について最高1%、最低0.2%で、危険度により定められている。

(3)労働者への給付内容

基本的には使用者に支給義務があるが、基金に加入しておれば基金から支給される給付の例

  1. 3日を超えて労働不能の場合、月額賃金の60%
  2. 器官の一部を喪失した場合、月額賃金の60%を労働省告示で定める期間(10年を限度)

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