労働災害件数の増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

ベトナムの記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年7月

2002年にベトナムでは4300件の労働災害(死者514人、1200人以上が怪我)が起き、170億ドン(110万ドル)が治療と補償に費やされた。労働災害件数は、2001年の3601件から19.4%増加している。特に、労働災害による死者数は、1999年に399人、2000年に403人、2001年に395人と、ここ3年間ほぼ400人前後であったが、2002年には500人を越える大幅な増加を記録し、重い労働災害が増加している。MoLISAによれば、クワンニン省、ホーチミン市、ハイフォン市、ダナン市などで最も多くの労働災害が発生している。

労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)によれば、犠牲者の51.6%が安全基準を遵守していなかった。しかし、労災の16%は安全な労働環境が提供されていなかったことが原因で起きている。多くの労働者が農村部出身で労働安全衛生について十分な教育を受けておらず、事故から自らの身を守ることができなかったとMoLISAは分析している。

労働安全衛生監察官の人数も十分ではない。全国10万社近くの監察対象に対し、96人の安全監察官、66人の衛生監察官では不十分である。

職場環境による発病

2002年には、6万2920人の労働者が健康診断を受け、その約13%が仕事に関連した病気にかかっていた。それらの病気のうちで最も大きな割合を占めているのは聴覚障害(38.8%)、珪肺症、気管支炎などである。保健省が、炭坑、エンジニアリング、建設などを営む35社で行った調査によれば、労働者の8.2%(2000年に比べ0.2ポイント増)が粉塵を吸うことなどで発症する珪肺症を患っていた。MoLISAは、仕事に関連した病気についてさらに調査を行う必要があると考えている。

2003年4月に開催された珪肺症対策会議で、2002年に全国で1万4000人の労働者が珪肺症に罹患しているとの報告があった。保健省は2002年に、珪肺症対策として、罹患率の高い産業や地域で、職場監察の強化、健康診断実施などを行った。保健省は、ベトナムでは2030年までにこの病気を撲滅できるという見通しを立てている。

関連情報