非典型労働者
─イタリアの労働市場における動向

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年7月

イタリアの「労働者」の概念については、大内伸哉著『イタリアの労働と法―伝統と改革のハーモニー』2003年、日本労働研究機構に従って整理した。

従属労働(prestatore di lavoro subordinato):「報酬と引き替えに、自己の知的又は肉体的労働を、企業長に従属して、その指揮下で提供することにより、企業内で協働することを義務付けられている者」(民法2094条)。一般的には従属労働者(lavoratore subordinato)という概念で「使用者の指揮命令下に賃金の支払いを受けて労務を提供する者」と解される。日本の労働基準法や労働組合法に相当するような体系的な労働立法のないイタリアでは・・・「従属労働者」概念に該当する者が労働法の適用対象になると解されている。

独立労働(自営業者)(lavoro autonomo):対価を受けて、主として自らの労働をもって、委託者に対して従属的な拘束なしに、作業又は役務を遂行することを義務づけられている者」(民法2222条)。

準従属労働(lavoro parasubordinato):他人(注文主)の事業組織と継続的な連携をしながら(組織的に組み入れられて)、個人的に協働するという特徴を持つ労働を指す。 連携的継続的協働労働(Colla Corazioni Coordinate e Continuativo:略称CO.CO.CO.)もこの1類型。

1.はじめに

イタリアでは、1990年代後半に非典型労働が著しく増加した。これは、イタリア全体の就業率の増加にも寄与した。実際、1997年から2000年の就業率は、全体で4.3%増だったが、契約類型別にみると、典型労働者(期間の定めのないフルタイムの従属労働者)が1%の増加であったのに対し、有期労働者の増加は35.5%にも達している。また、この間に増加した就業者のうち46%は、非典型労働者であった(表1および2参照)。

表1:1997年から2000年における就業者の動向(年平均、1000人)
  1977 2000 2001 2002
就業者 13,015 7,192 20,207 13,316 7,664 21,080 13,455 8,060 21,514 13,593 8,236 21,829
独立労働者 4,164 1,671 5,835 4,238 1,711 5,949 4,258 1,740 5,998 4,237 1,743 5,980
パートタイム 159 234 392 166 272 438 157 271 428 159 266 425
従属労働者 8,852 5,522 14,374 9,077 6,054 15,131 9,197 6,319 15,516 9,356 6,493 15,849
期間の定めのないフルタイム 8,140 4,471 12,611 8,150 4,599 12,749 8,298 4,785 13,083 8,433 4,867 13,300
期間の定めのないパートタイム 103 532 635 134 719 853 136 783 919 137 849 986
有期のフルタイム 462 317 779 597 445 1,042 580 465 1,045 609 495 1,104
有期のパートタイム 147 202 349 196 291 487 183 286 469 178 281 459
有期契約の総計 609 519 1,128 793 736 1,529 763 751 1,514 786 777 1,563
全就業者に占める有期契約の割合 4.7 7.2 5.6 6.0 9.6 7.3 5.7 9.3 7.0 5.8 9.4 7.2

出所:ISTAT(年平均)

表2:1997年から2002年における就業者の変化(年平均、%)
  1997-2000 2000-2001 2001-2002
就業者 2.3 6.6 4.3 1.0 5.2 2.1 1.0 2.2 1.5
独立労働者 1.8 2.4 2.0 0.5 1.7 0.8 -0.5 0.2 -0.3
パートタイム 4.4 16.2 11.7 -5.4 -0.4 -2.3 1.5 -1.8 -0.6
従属労働者 2.5 9.6 5.3 1.3 4.4 2.5 1.7 2.8 2.1
期間の定めのないフルタイム 0.1 2.9 1.1 1.8 4.0 2.6 1.6 1.7 1.7
期間の定めのないパートタイム 30.1 35.2 34.3 1.5 8.9 7.7 0.7 8.4 7.3
有期のフルタイム 29.2 40.4 33.8 -2.8 4.5 0.3 5.0 6.5 5.6
有期のパートタイム 33.3 44.1 39.5 -6.6 -1.7 -3.7 -2.7 -1.7 -2.1
有期契約の総計 30.2 41.8 35.5 -3.8 2.0 -1.0 3.0 3.5 3.2

出所:ISTATのデータに基づいてIRESが作成

一方、2001年には、期間の定めのないフルタイムの労働者が、以前に比べて上昇したのに対し(2.6%増)、有期の従属労働者は減少した(1%減)。2002年には、有期契約が3.2%増加したのに対し、全体の就業率は1.5%の増加であった(典型労働者の増加は1.7%にすぎない。

表3:就業類型の増減(1月比)
  2000-2001 2001-2002 2002-2003
1,000人 1,000人 1,000人
就業者 656 3.2 371 1.7 180 0.8
独立労働者 157 2.7 22 0.4 20 0.3
フルタイム 141 2.6 39 0.7 32 0.6
パートタイム 17 4.1 -17 -4.0 -12 -3.0
従属労働者 498 3.4 350 2.3 159 1.0
期間の定めのないフルタイム 370 2.9 302 2.3 103 0.8
有期のパートタイムないし 128 5.8 49 2.1 56 2.3
期間の定めのないパートタイム 89 11.0 81 9.1 20 2.0
有期のフルタイム 4 0.4 6 0.6 27 2.7
有期のパートタイム 36 8.4 -38 -8.3 9 2.1
有期契約の総計 39 2.8 -32 -2.3 36 2.6

出所:ISTATのデータ(2003年1月時点)に基づいてIRESが作成

独立労働者に関しては、2000年から2001年にかけて0.8%増、2002年に0.3%減少と、この2年で目立った変化はない(表2参照)。ただし、独立労働者の中でも、連携的継続的協働労働者(CollaCorazioni Coordinate e Continuativo以下、CO.CO.CO.)は増加し続けている(現在約240万人)。

女性労働者の動向は、活発であり、1997年から2000年の間に6.6%、2000年から2002年の間に7.4%増加している(男性はそれぞれ、2.3%と2%)。

他のEU諸国と比べると、イタリアでは、女性就業者がパートタイムの増加と関わりなく増えてきた。実際、パートタイムは、1990年代(とくに後半)になって増加し始めたにすぎない。1997年から2000年の間に、パートタイムの従属労働者は36%増加した。近年におけるパートタイム労働の増加は、特定の社会層(とくに女性)の労働市場への参加が支援されたことにも一因ある。ただし、1990年代における全就業率の上昇にはそれほど影響しなかった(むしろ、他の契約類型の増加が著しい)。

就業全体に占めるパートタイム労働の割合(8.6%)は、いまだEU平均(17.9%)を大きく下回っており、イタリアの労働市場において、女性、若年者および高齢者等が直面している困難が浮き彫りになっているといえよう。性別にみると、パートタイム労働は、女性就業率全体の16.9%(EU平均33.4%)、男性就業率全体の3.5%(同6.2%)を占めている。近年、パートタイム労働契約類型は、あらゆる部門で増加し一般化しているが、とく第3次産業に多くみられる。また、性別を問わず35歳から45歳の年齢層での増加が目立っている。

現在、パートタイム労働者は187万人にも上るが、このうち75%は女性である。ただし、地域差があり、北部では81.7%、中部では75.3%、南部および島嶼部では56.7%である。労働の機会が限られた南部では、比較的保護制度の整った非典型労働が、男性の関心を引きつつあるものの、女性に関しては、他の地域に比べ、安定性の低い非典型労働(たとえば、CO.CO.CO.労働など)が広まっている。

イタリアにおける就業の動向は、失業者の人口構成の変化からも窺われる。1993年から2002年における求職者の変化をみると、30歳以上の成人の割合は、34.7%から49.5%へ、なかでも30歳から39歳までの成人の割合が19.5%から27.4%へと上昇している。これらのデータから、イタリアの失業が、若年者だけでなく壮年層(とくに30歳から39歳の成人)にも広がっていることがわかる。

2.非典型労働の例─継続的連携労働関係(CO.CO.CO.)

イタリアの労働市場における非典型労働を象徴するのは、CO.CO.CO.労働者である。法律家、社会学者、政府および労働組合などがこの契約類型に着目しているのは、その数が増えているからというだけでなく、これらの労働者が有する職業的・社会的異質性のためでもある。CO.CO.CO.労働者に関しては、適切な規制が制定されることもなく、労働者側からの保護の要求もほとんど省みられなかった。

1996年に社会保障関係の規制が導入され、INPSに準従属労働者のための基金が創設されると、労働市場にすでに存在していた約100万人の準従属労働者が把握されるようになった。1996年から現在まで2‚393‚527人の労働者が加入している。

基金への加入者は当初の1年間に約30%増加し、その後1997年から2001年の間には平均13%ずつ増加している。2001年から2002年の増加率は11.5%であった。

加入者の増加は、とくに女性で目立っている。この2年間の増加率は、男性が22.7%であったのに対し、女性は26.7%であった。現在、基金の加入者に占める女性の割合は、46.2%である。

図表4:加入者の増加(性別)
図表4:画像

出所:INPSのデータに基づきIRESが作成

図表:5加入者の増加(地域別)
図表5:画像

出所:INPSのデータに基づきIRESが作成

INPSの基金への加入者は南部でも増えているものの、CO.CO.CO.労働は、依然として北部に集中している(北部108‚602人増に対し、中部64‚173人増、南部52‚166人増)。ただし、率でみると、北部、中部および南部での加入者の増加率は、それぞれ、9.9%、14.8%、13.5%である。このことから、準従属労働契約が、イタリア全土で拡大していることがわかる。

また、CO.CO.CO.労働は、就業形態の中で重要なものとなっている。2000年にCO.CO.CO.労働が就業者全体の約9%を占めていたのに対し、現在は11%である。有期労働が従属労働の9.8%、派遣労働が有期労働の4.7%であることを考えると、この数値は無視できないであろう。

3.女性と非典型労働

先述のように、準従属労働への女性の進出が進んだ結果、準従属労働者に関する基金の加入者の46.2%を女性が占めるに至っている。女性労働者の割合は、伝統的な非典型労働である有期労働で49.7%、就業者全体では37.7%である。基金加入者における女性の割合は、地域により差がある。南部の州では女性の割合が高く(54.5%)、中部および北部では男性が多い(女性の率はそれぞれ46.5%および43%)。

南部の女性就業者のうち、約14%がCO.CO.CO.労働に従事している(北部では12.5%)。逆に、就業者全体をみると、南部で準従属労働に従事する者は少ない(南部5.3%、中北部11.4%)。

さらに、ラツィオ州、サルデーニャ州、シチリア州では、女性就業者のうちCO.CO.CO.労働者の割合が非常に高く、16%を超えている(表5参照)。これらの3州でCO.CO.CO.労働の割合が高い理由は、それぞれ異なると考えられる。まず、ラツィオ州に関しては、CO.CO.CO.労働が広く用いられ、女性の参加が顕著なサービス業の普及が関係しているとみられる。これに対し、南部の2州については、労働市場における女性の脆弱性の現れと考えられる。つまり、男性がより多くの選択肢を有しているのに対し、女性はいまだ、より不安定な労働を提供され、これを受け入れる傾向がある。

表6:準従属労働者と年金受給者(州別、2001年)
  加入者に対する年金受給者の割合 年金受給者の構成
男性 女性 男性 女性 男性 女性
Piemonte 16.6 8.7 13.1 8.5 9.4 8.8 29.1 70.9 100.0
Valle d'Aosta 18.1 9.7 14.4 0.4 0.4 0.4 29.3 70.7 100.0
Lombardia 16.2 8.2 12.7 24.9 26.3 25.3 28.4 71.6 100.0
Trentino-Alto Adige 20.1 12.8 17.3 3.6 3.7 3.6 27.9 72.1 100.0
Veneto 14.8 7.3 11.8 10.1 8.7 9.8 24.4 75.6 100.0
Friuli-Venezia Giulia 17.4 8.1 13.4 3.4 3.2 3.3 26.3 73.7 100.0
Liguria 17.7 7.9 13.4 3.4 3.2 3.4 26.0 74.0 100.0
Emilia-Romagna 18.9 9.1 14.9 12.8 11.3 12.4 24.7 75.3 100.0
Totale Nord 16.8 8.4 13.2 67.2 66.2 66.9 27.0 73.0 100.0
TosCana 15.6 6.5 11.8 8.9 7.1 8.4 23.1 76.9 100.0
Umbria 15.7 6.1 11.3 1.7 1.5 1.7 24.4 75.6 100.0
MarChe 16.1 6.4 12.1 3.3 2.5 3.1 22.3 77.7 100.0
Lazio 11.1 4.5 7.8 7.5 8.1 7.7 28.9 71.1 100.0
Totale Centro 13.7 5.4 9.9 21.3 19.2 20.7 25.2 74.8 100.0
Abruzzo 12.4 4.3 8.4 1.4 1.3 1.3 25.5 74.5 100.0
Molise 11.1 2.9 6.9 0.3 0.2 0.2 21.2 78.8 100.0
Campania 8.4 3.8 5.9 2.3 3.4 2.6 35.6 64.4 100.0
Puglia 10.0 3.5 6.4 2.2 2.6 2.3 30.8 69.2 100.0
BasiliCata 9.1 3.0 5.7 0.3 0.3 0.3 29.4 70.6 100.0
Calabria 8.4 3.4 5.7 0.7 0.9 0.8 32.3 67.7 100.0
SiCilia 9.9 4.0 6.3 2.3 3.8 2.7 38.6 61.4 100.0
Sardegna 14.0 4.8 9.2 2.1 2.0 2.1 27.0 73.0 100.0
Totale Sud 10.2 3.9 6.7 11.5 14.6 12.4 32.2 67.8 100.0
Residenti estero 16.7 0.0 11.1 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0 100.0
Italia 15.0 6.6 11.1 100. 100. 100.0 27.2 72.8 100.0

出所:INPSのデータからIRESが作成

4.若年者と非典型労働

下記表4からわかるように、CO.CO.CO.労働者の多くは若年者以外の層から構成されている。これは、有期労働における若年者とそれ以上の年齢層との割合が、ほぼ等しいことと対照的である。

図表7:準従属労働者と有期労働者の割合(年齢別、2002年)
   年齢層
15-29 歳 30-49 歳 50 歳以上
就業者 19.9 58.3 21.8 100.0
有期労働者 44.3 44.9 10.8 100.0
準従属労働者 21.1 53.2 25.7 100.0

出所:INPSおよびISTATのデータよりIRESが作成

準従属労働者に関するINPSの基金の加入者についてみると、その21.2%が30歳未満であるが、もっとも加入者の多い年齢層は、30歳から39歳であり、加入者の約3分の1が集中している。したがって、CO.CO.CO.労働が、労働市場への参入の契機となり、安定的な就業を見つけるための手段といえるケースは限定的であると考えられる。

CO.CO.CO.労働関係に関する他の傾向としては、50歳以上の労働者が多いことも挙げられる。50代の労働者が15.4%、60代以上の労働者が10.3%にも達している(就業者全体に占める50代以上の労働者の割合は4.6%)。したがって、CO.CO.CO.労働は、就業活動からいったん引退した後、さらに就業を望む者(あるいはこれを必要とする者)に適した契約形態であるといえる。

CO.CO.CO.労働に従事する女性の年齢は、男性に比べて低い傾向がある(女性の平均36歳、男性の平均43歳)。したがって、女性準従属労働者のうち、労働市場へ参入する年齢層の占める割合は、男性よりも多い。とくに、30代では、男性28.9%に対し、女性35.9%である。一方、女性準従属労働者のうち、60代以上の者は5.4%にすぎない(男性14.6%)。

データの分析から、CO.CO.CO.労働は、カテゴリーごとに様々な役割を果たしていることが窺われる。男性に関しては、労働市場への参入手段というよりも、就業活動の継続手段として機能している可能性が高いのに対し、女性については、労働市場へ参入する1つの方法となっていると考えられる。また、就労の機会が多い地域では、女性の労働市場への参加形態が男性の場合と近いのに対し、南部では依然として、女性が不安定な労働に就く傾向があることもわかる。

5.協働労働者と注文主の類型

準従属労働者に関するINPSの基金への加入者は、3種類に分類される。すなわち、CO.CO.CO.労働者(当該基金加入者の90%を占める)、付加価値税の納税者登録番号を有する自由業労働者(加入者における割合は、当初の11%から7.9%へと徐々に減少しつつある)、そして、職業リスト等に登録されている協働労働者ないし自由業労働者(2.1%)である。

INPSの基金加入者の大部分について、CO.CO.CO.労働が従属労働関係を事実上隠蔽しているかを明らかにする際に、学問的政治的議論においては、注文主の存在および契約類型が指標として用いられてきた。とくに、注文主が1人に限られていることと付加価値税の納税者登録番号が欠如していることは、従属性の指標と考えられている。興味深いのは、基金への加入者のうち実に91.1%が、単独の注文主としか取引をしていないことである。もっとも、このデータは状況証拠にすぎないため、当該問題を明らかにするための研究が進められているところである。

一方、INPSのデータによると、注文主たる企業の大部分はサービス業である。すなわち、約23%が商業関係、9.8%が金融財政関係、7.2%が公衆向けの公的・私的サービスである。工業部門に属す注文主は、わずか26.8%にすぎない。もっとも、生産活動が多様な北部の州では、工業部門の注文主が多い。これに対し、中南部では、注文主が公的主体であることが多い。

CO.CO.CO.労働を頻繁に利用する企業には中小企業が多く(中規模企業63.3%、小規模企業30.6%)、大企業ではそれほど普及していないようである。CO.CO.CO.労働の主たる利用者が中小企業であることは、コストの削減に理由があると推測される。これに対し、大企業では、組織の柔軟性の拡大および一時的な需要のために、こうした労働を利用するようである。利用企業の規模が小さいことは、協働労働に対する需要が、小規模企業の多いサービス業で高いことも影響していると思われる。

INPSの基金に組み込まれた協働労働者の従事する職業はきわめて多様である。最も新しい1999年のデータによると、第3次産業関連の職業が非常に多い。

協働労働者は、所得や地位の点でも多様である。基金の成立当初からの主たるカテゴリーである会社の取締役は、加入者の38%を占め、その多くが40代以上の男性である。残りは、在宅販売者(7.7%)、税および会計コンサルタント(6.6%)、講師および先生(6.0%)、社会扶助および医療関係の作業員(1.3%)、スポーツインストラクターおよびファッション・興行関係の労働者(1.9%)などである。

さらに、性別による差もみられる。技術者やコンサルタント等は男性が多く、在宅販売者は女性が多い。一方、講師、先生、スポーツインストラクターおよびアーティストに関しては、男女差があまりない。

6.協働労働者の平均所得

INPSのデータによれば、CO.CO.CO.労働者の所得は非常に低い。1999年の基金加入者の約59%が、年7‚500ユーロ未満であり、税控除前の平均所得は、11‚589.75ユーロであった。北部において、CO.CO.CO.労働者は、12‚861.75ユーロの所得があるのに対し、中部は10‚258.42ユーロ、南部は6‚812.96ユーロである(いずれも税控除前年所得)。

南部の州ほど、低所得者層の割合が高い。北部では、7‚500ユーロ未満の所得者層が56%であるのに対し、中部は61%、南部は74.5%である。

女性のCO.CO.CO.労働者の平均所得は、男性の約半分である(女性約6‚900ユーロに対し、男性約14‚700ユーロ)。このデータは、女性の方が、報酬の低い職業に就くことが多く、不安定な協働労働関係に置かれているという事実を反映していると考えられる。

所得の低い協働労働者の中には、他の収入源を有する者もあるが(年金受給者や従属労働者。34%)、多くは協働労働による収入のみであり、おそらく、短期間の労務に就いていると考えられる。実際、イタリアの労働者が、年5‚000ユーロに満たない報酬で、フルタイムで働くとは考えにくい。したがって、より待遇の良い契約への足がかり、あるいは、未就労状態から脱出するための一手段として、暫定的に非典型労働を利用する者が多いと思われる。

130万人がこうした低所得を甘受していることは、周知の事実である(多くの場合、家族の援助を受けている若年者や、夫の所得を補うために働いている既婚女性)。問題は、当座このような所得で生活できても、こうした状況に固執すれば、将来、老齢年金が、社会年金より低い水準になりうることである。

INPSのデータからは、年7‚500ユーロ以上の所得を有するCO.CO.CO.労働者の内訳は不明である。だが、おそらく、こうした所得者層の協働労働は、真の独立労働か、独立労働に名を借りた従属労働の偽装形態であろう。

CO.CO.CO.労働の所得は、職業により様々である。職業ごとの平均所得は、「会計および管理業」の労働者(たとえば秘書など)が年6‚386.16ユーロ、輸送および運送業の労働者がわずか年4‚990.80ユーロである。高所得者としては会社の取締役(1999年の平均所得は年19‚766.53ユーロ)、「機械技術アシスタント」(年10‚583.42ユーロ)などが挙げられる。

また、地域による格差もある。たとえば、会社の取締役についてみると、北部の年21‚390ユーロに対し、南部はわずか年12‚877ユーロにすぎない。また、北部で秘書業に従事する女性労働者が年6‚600ユーロ稼ぐのに対し、南部では年約4‚600ユーロである。労働時間や他の就労活動の有無に関する情報はないものの、かなり低い所得であることは確かである。

7.「補足的労働」および第2の就労機会としての非典型労働

INPSの基金加入者のうち、補足的・補助的労働としてCO.CO.CO.労働に就く従属労働者、および、就労活動を継続しようとする年金受給者の数は無視できないものである。実際、準従属労働者のための基金加入者のうち、従属労働者は23.1%、年金受給者は11%にもなる。これが、年5‚000ユーロ以下の所得の加入者が多いことの理由の1つである。

従属労働者の加入者は北部に集中している(59.7%)。北部では、就労の機会が多く、その分、従属労働者がCO.CO.CO.労働に就くことが多いためと考えられる。

従属労働と準従属労働との掛け持ちは、イタリア全土でみられる現象である。男女の比率もほぼ等しい(女性が全体の50.6%)。こうした掛け持ちをする女性労働者は全女性加入者のうち25.7%、男性労働者は20.8%である。

一方、年金受給者には、男性(約73%)および北部在住者(67%。ロンバルディア州だけで約4分の1にも達する)が多い。したがって、この現象は、イタリアでもより裕福な地域の男性にみられるものだといえよう。

この現象は両義的である。すなわち、労働の掛け持ちをする労働者にとっては確かに好機であるが、これは、無職の者から労働の機会を取り上げることにもなるからである。

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