学校改革の立法化

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

中道右派政府による学校改革(教育大臣の名をとって、Moratti改革とも呼ばれる)が、上院での最終承認を経るに至った。

同改革の重点は、学校と職業訓練との関係を見直すことである(とくに、職業訓練の改善)。具体的には、高等学校および技術学校に加えて、「学校・労働互換制度(alternanza scuola-lavoro)」と呼ばれる第3の選択肢を提供することで、後期教育課程を強化している。また、同時に、義務教育を短縮し(現状の9年から8年へ)、代わりに18歳までの「職業訓練権」を定めている。

当初案では、小学校と中学校を統一したうえで、7年間の初期教育課程とし、高等学校で実施されている最終試験の廃止および義務教育期間の引き上げ(16年間)が予定されていた。また、一般教育(高等学校)と職業教育(技術学校および職業学校)との区別も撤廃し、新たな後期教育課程として、2年間の共通過程と3年間のオリエンテーション期間が設けられることになっていた。しかしMoratti改革は、小学校、中学校および高等学校という現状の3レベルの教育課程を確認し、また、後期教育課程における3つの分野(一般課程、技術課程および職業課程。ただし、実際上、後2者は「職業訓練学校」と総称される)も維持している。

中道左派政府による学校改革(2000年法律30号として承認されたが、実施されず)とMoratti改革との違いは、子を抱える家庭の選択に対し、いかなる教育機関を提供するかという点である。教育機関は公共財であるから、個人の希望とは無関係に全ての者に対して等しく提供されなければならないという考え方によれば、学校間の格差は小さくなければならないであろう。逆に、教育機関から得られる利益は市民のものであるから、教育の質および量を選択する自由は個人に委ねられるべきと考えれば、個人が自分に適した学校を見つけられるよう、学校の多様性は最大限確保されるべきということになる。前政権が前者の考え方に基づいていたのに対し、今回のMoratti改革は、学校・労働互換制度を導入するなど、多様性の強化を目的としている。

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