賃金と退職年金の官民格差

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

人口学的見地から今後良質な人材の確保が難しくなることが予測される中、国は、公務員の魅力を積極的に主張していく必要がある。退職年金、賃金、キャリアの展開、可動性、そして労働条件は、民間企業との競争の中で、労働者を囲い込むために使わなければならないパラメーターだ。公務省はこの方向で労働団体との話し合いを開始した。しかし、退職年金拠出期間の一本化を発表した政府は、公務員の一般規定を構成する要素とその基礎となる社会契約にも触れている。ラファラン首相が止まることなく改革を進めたいのであれば、下への調和や一連の後退ではなく、開かれた見通しを提案しなければならないだろう。ともあれ、退職年金と賃金について、大まかな官民格差を見てみることにしよう。

退職年金

1993年の一般制度の改革、そして補足制度ARRCO(非管理職)とAGIRC(管理職)について行われた1996年と2001年の改革以降、公務員は退職年金に関して、民間労働者よりも恵まれた立場にある。民間の労働者は60歳から65歳の間に満額の年金を受給するために合計40年にわたって保険料を支払わなければならない。それがないと、一般制度の場合、1年間の早期退職で年金額が10%削減されることになる(65歳で満額が得られる)。

一方、公務部門の場合、一般的には被保険期間が何年であろうとも、60歳で満額の年金が支給される。その上、軍や警察など、多くの機関は55歳で引退できる。しかも、公務員の拠出期間は37.5年と短い。また、公務員の年金額は退職前6カ月の俸給の75%が支払われ、一般制度で用いられている最も高い25年間の平均職業所得の50%(これに補足制度で獲得されたポイントが加えられる)に比べると有利になる。実際に近い置き換え率(最後の賃金に対する退職年金額)は、1993年のバラデュール改革が完全に機能することになると(すなわち、2008年)大幅に格差が広がり、民間部門が不利になる。

しかし、保険料負担の不在が年金計算で一部の公務員に不利に働き、一部の者は年金が減額されていることに注意する必要がある。男子の場合、民間労働者の85.6%が満額の年金を受け取っているが、その割合は国家公務員だと71.6%、地方公務員だと58.7%になる。

賃金

共通の統計的道具がないし、公務員の報酬が不透明なこともあって、賃金の比較はデリケートな問題だが、国立統計研究所(INSEE)は、2000年の手取り年収中央値を国家公務員が2万2188ユーロ、民間部門労働者が1万6520ユーロと推計している。1990-2000年に国家公務員の手取り平均賃金は10.2%の購買力の上昇を記録したが、民間の場合は4%にとどまった。

しかし、低い等級の公務員は民間部門よりも恵まれているように見えるが、ピラミッドの上部になると状況は一変する。たとえば、公務部門で最高等級のエンジニアは、民間部門の同僚よりも25%も稼ぎが悪い。

雇用とキャリア

雇用保障など、民間部門ではとんでもない話だが、国の各機関(職員210万人)も5万5000人以上の契約職員を雇用し、33万人近くが3つの公務部門の補助契約(雇用契約、連帯、若年者雇用など)で働いている。したがって、不安定雇用は民間部門の専有物というわけではない。

しかし、失業悪化の時期に見られるように、正規雇用の公務員が享受する雇用保障は年々、その魅力を失う恐れがある。この状況を認識して、政府はキャリアに関する一連の協議を開始した。たとえば、内部昇進の拡大、キャリア渋滞の要因であるピラミッド型等級の弾力化、公務員手当のデリケートな問題に踏み込まないと手をつけられない公務員機関の融合もしくは可動性に着手した。CFDTはすでにこれらの問題を深く掘り下げて検討を進めており、UNSA公務員部も議論の用意を調えている。しかし、FOとCGTはまだその段階に達していない。

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