政府が3億ユーロの失業対策緊急措置

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

政府の満足感は労働組合の懐疑主義と対照的だ。社会問題省で開催された雇用に関する会議は、挨拶に訪れたラファラン首相に「総動員」を約束させ、「雇用と社会問題の側面で国は倹約しない」と言明させた。そして少し後で、フィヨン社会問題相は、「今年末に労働人口の9.5%に達する恐れがある失業の増大と経済成長の減速化に対応する緊急措置のために、政府は2003年に3億ユーロの追加予算を組む」という交渉相手に発表したばかりの内容を正式に確認した。

この予算は、基本的に、失業の社会対策と最も困難な立場にある人たちのために使われる。たとえば、民間部門で採用された長期失業者を対象とする率先的雇用契約(CIE)が再開される。2003年には、予想されていた5万5500人ではなく、8万人の新規対象者にこの措置に基づいて資金が提供される。また、フィヨン社会問題相が就任以来約束していたように、連帯雇用契約(CES)についても予算に組み込まれていた16万人に、8万人が新たに追加された。CESと強化雇用契約(CEC)(こちらは公共部門と準公共部門が対象である)は結局のところ、「雇用強化随伴契約」に統合されることになる。さらに、18歳から25歳の大学入学資格取得者を対象とした社会生活同化契約(CIVIS)も実施されるが、こちらは当初の計画よりも小規模に、2004年までに2万5000人の社会的雇用が創出される。

景気対策だけで満足せずに、連帯支出を増大させることに熱心なフィヨン氏は、現役最低所得(RMA)の創設も決定した。2年以上社会復帰最低所得(RMI)を受給していた人たちに支給されるこの所得は、定額手当と最低賃金への到達を可能とさせる補完額が一体化するものだが、使用者の拠出分は国が負担する。この計画にはフランス企業運動(MEDEF)が高い評価を与えている一方、労働団体のリーダーたちは不安を隠していない。キリスト教労働者同盟(CFTC)のジャッキー・ダンタンジェール氏は、不安定な雇用形態を悪化させるのではないかと警戒を呼びかける。また、いわゆる「高齢」労働者の雇用促進を目的に、50歳以上の高齢労働者を解雇する企業にドラランド課徴金が適用されていたが、その規則が緩和されることになった。すなわち、45歳以上の者(もはや50歳以上ではない)を採用した場合、あとでこの労働者を解雇した場合でも、課徴金を支払う必要がなくなる。地域と労使当事者との間で話し合われる可能性のあるリストラ対策として、転職組織へ割り当てられる予算を2倍にすることも決定された。

国と労使は力を結集していかなければならないと確信しているフィヨン氏は、欧州雇用戦略の復活に努力していくことを労使に提案。その文脈で、労使に職業訓練交渉での「速やかな前進」を求めた。同時に、「政府は労使問題を解決するために必要なあらゆる措置を講じる」ことを約束するとともに、「秋には国会で必要な法改正を提案していく」と明らかにした。

この暗黙的な警告に対しても労使は表だった反応を示していない。「この発表には、失業の増大に直面した政府が見せるきわめて古典的な姿勢しかない」と言うのはCFDTのシェレック書記長だ。CGTのチボー書記長はさらに厳しく、「解雇計画が雪崩打つ中で、我々は小さなスプーンで除雪しようとしている」と反発する。管理職総同盟(CFE=CGC)のカゼット会長は、「我々は何も期待していなかったので、失望はない」と皮肉ったが、労働者の力(FO)のブロンデル書記長は「政府の伝統的なアプローチだ」と強調した。2003年を「若者たちのために総動員の年」にしたいと願って、職業平等に関する交渉を発表したMEDEFのセリエール会長によると、経営側だけは「望ましい方針」だと評価している。

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